『Dairy Japan』2024年3月号p.42「ルポ3」より
購入飼料主体の経営が多い愛知県南部の渥美半島。ここで経産牛190頭を飼養する有限会社鈴木牧場は、約10年前からエコフィードの利用を始め、その利用割合を増やしてきました。飼料高騰下の今、エコフィードを上手に利用するポイントを聞きました。
飼料費高騰がきっかけ
鈴木牧場がエコフィードの利用を始めたきっかけは「アルファルファの価格が上がってきて、置き換えやすいものを探した」と管理主任の鈴木雅隆さん。最初はビール粕から始め、コスト低減を実感したと振り返ります。このビール粕は、地元の動薬・飼料ディーラーから購入しています。
その後、一時は生のおからを利用しましたが、「生おからは水分が約80%と高いもの。ギ酸などの添加もなく、まさにナマ物。トランスバッグに詰めて週1回の配送だったが、納品から日が経つと見た目や匂いが気になることもあった」として利用中止を検討したと言います。そのタイミングで前出のディーラーがおからサイレージの調製・供給を開始。鈴木牧場もおからサイレージの利用に切り替えました。
ハンドリング抜群のおからサイレージ
おからサイレージは、おからにトウモロコシなどを加え、調製・発酵したエコフィード・サイレージです。生のおからのように保管における経時的な品質変化はなく、開封後も1日程度であれば変敗の心配はありません。このため、トランスバッグから開封して、きちんと頭数ぶんをTMRミキサーに投入することができ(生のおからはトランスバッグ単位での投入)、TMRの質の安定と飼料ロスを減らすことにつながりました。
さらにエコフィード利用を増やす
ビール粕、おからサイレージの利用で飼料コストの低減を実感した鈴木牧場は、次に醤油粕、さらに酒粕と新たなエコフィード利用にもチャレンジ。こうしたエコフィードの積極利用により、乳飼費は利用前に比べて低減したことを実感していると言います。取材時での乳飼費は約40%、乳価値上げ前でも42%と購入飼料主体の地域にして良好な水準で推移しています。
エコフィードの利用は日々のモニタリングから
エコフィードは一般的な購入飼料に比べて品質や成分の変動が大きいデメリットがあります。ゆえに、使い方を誤れば生乳生産に影響があるだけでなく、ときに乳牛の健康被害にもつながりかねません。そこで鈴木牧場では、日々の喰い込みと糞の状態、乳成分の変動を常時モニターし、またダイジェスチョンアナライザーで消化をモニターし、TMRの微調整を繰り返しています。TMRの微調整には飼料メーカーや獣医師の協力が不可欠とも。
そして今後は、飼料コストの安定に向けて自給飼料生産にも注力していくと言います。自給飼料生産は耕種農家や外部の組織に作業委託することで労力の低減と、地域への貢献にもつなげたいと話します。