酪農技術情報

製造粕が救世主に

JOURNAL 2024.06.18

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

『Dairy Japan』2024年3月号p.38「ルポ2」より

経産牛38頭を飼養する佐久間牧場(千葉県船橋市)は都心近郊かつ住宅地という立地から購入飼料100%で経営しています。同牧場がエコフィードを取り入れた経緯や有効利用するための工夫などを聞きました。

導入は酒粕から

 佐久間牧場の佐久間純子さんは「この先輸入飼料にばかり頼るのは危ない」と感じたことをきっかけに、2020年から食品製造副産物(エコフィード)の利用を開始しました。
 エコフィード利用への不安を聞くと「昔からエコフィードに触れていたこともあり、悪い印象はなく、コストメリットを生み出してくれるとわかっていた」と答えます。最初に導入したのは酒粕で、比較的保存が効き、取り扱いやすいと感じたと言います。導入から3年が経過した現在は、酒粕、醤油粕、ビール粕、パイナップル粕、小豆皮、ささげ豆、おからの7種類を利用して飼料設計しています。

紙に包まれた食べ物

自動的に生成された説明

継続して乳質の安定させる

 エコフィード導入当時は乳質や牛の状態などを見つつ、徐々にエコフィードの給与量を増やす予定でしたが、飼料価格高騰の波が一気に押し寄せ、短期間で給与メニューを大きく変えざるを得ない状況でした。それにより乳脂率が下がり、ペナルティに悩んだこともあったと言います。反面、飼料コストが下がったことでなんとか経営を続けられたとも。佐久間さんは「ほかの牧場からエコフィードを取り入れた当初に乳脂率が低下してしまったという話は聞いていた。試行錯誤するなかで安定していくと思い、エコフィードの利用を続けた」と話します。現在では導入当時に比べ乳質は安定し、基準値内で推移しています。

バランスの取れたメニューに

 同牧場のエコフィードは、愛知県に本社を置き、飼料化や堆肥化により食品廃棄物のリサイクルを行なう有限会社環境テクシスから全量供給されています。利用するエコフィードは、同社による検査で品質が担保されたものが届けられています。まれに7品目のうち1種類の供給が足りなくなるといった事態が発生することもあると言いますが、その場合は供給された6種類のエコフィードのなかで給与量を調整することでバランスの取れた飼料メニューに変更しています。

建物の前にいるトラック

中程度の精度で自動的に生成された説明

 TMR中の約5割がエコフィードという同牧場は、継続的な取り組みにより乳質は安定し、同時に乳量も増えたと言います。1頭当たり30kg/日未満だった乳量が、エコフィードを取り入れてから徐々に増えて33kg/日ほどになったと教えてくれました。

干し草の上にいる

中程度の精度で自動的に生成された説明

さらなる安定を求めて

 エコフィードを今後も利用し続けるための課題を聞くと、「作業の労力を減らすこと」だと佐久間さん。現在、TMR調製時に7種類をすべて手作業でTMRミキサーへ運んでいます。「エコフィードを取り入れる前に比べ作業時間や労働力が増えてしまった。今後、人員を増やす、または労力を減らすなどの方法を考えていく」と話してくれました。

 さらに、「エコフィードはコストメリットを生んでくれることはもちろんだが、それを使うことで環境保護でも社会貢献できる」と言います。本来廃棄されるはずの物を酪農現場で再利用することが温室効果ガス削減につながり、昨今世間を賑わせているSDGsにも貢献できます。環境に配慮した酪農をすることで、消費者がそうした課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動する“エシカル消費”ならぬ“エシカル酪農”ができるとして、こうした活動が消費者に伝わることでさらなる酪農の発展を目指したいと今後のビジョンも話してくれました。

建物, 屋外, 座る, フロント が含まれている画像

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PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

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