酪農技術情報

繁殖は個体管理から

JOURNAL 2024.04.04

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

『Dairy Japan2023年4月号』p.38「ルポ2」より

高繁殖が生産効率向上につながる

 豊かな酪農経営をするために欠かせないのは生産効率です。そして生産効率と切っても切れない関係なのが「繁殖」です。高繁殖を意識した周産期管理をすることができれば生産効率はおのずと上がって来るでしょう。

 千葉県南房総市の株式会社小泉牧場では、周産期管理をするうえで意識しているポイントとして「個体管理を徹底すること」と言います。牛群から個体まで敷地内のさまざまな施設を有効活用して飼養管理を行ない高繁殖につなげていました。

きっかけは施設更新から

 小泉牧場は2016年に増頭のため、繋ぎ牛舎のほかにフリーストール牛舎を稼働しました。当初はケトーシス、低カルシウム血症、第四胃変位などの周産期病が多く頭を悩ませていたと言います。
 そこで千葉県農業共済組合の獣医師と相談を重ね、乾乳期のエサを変更したと言います。もともと乾乳期の60日間、3kgの配合飼料を給与していたところを、分娩2週間前に0.7kg増量。1週間前になるとさらに0.7kg増量したそうです。併せてバイパスアミノ酸やビタミンD3製剤を給与して、ケトーシスや低カルシウム血症を予防しました。

 小泉さんは「乾乳期の飼料を変更してすぐに結果が現れた」と以前と比べて周産期病はが激減し、効果を強く実感したと言います。

個体管理で異変に気がつく

 「それでも病気がゼロになることはない」と言う小泉さんは「個体管理を徹底することが一番のポイント」だと話します。
 メインはフリーストール牛舎ですが、分娩後すぐにフリーストール牛舎に牛を戻すのではなく、個体管理に適した繋ぎ牛舎でエサの喰いや反芻状態、寝起きなどを見ながら2〜3週間管理するそうです。

 また、産褥期の牛には、誰が見ても一目でわかるようにピンク色のリボンを付けて管理をします。リボンが付いている牛は、最初に搾乳をすることで、飼槽に最もエサがある状態で牛舎に戻ることができ、喰い込みや搾乳後の動きも観察しやすくしています。

 このような管理体制のなかで様子がおかしな牛がいれば、すぐに獣医師の診療のもと早期治療し、周産期病を予防していました。

 上記の取り組み以外にもフリーストール牛舎でベッドに寝ない牛も繋ぎ牛舎で管理をするなど、牛の状態に合わせて最適な場所での飼養を心がけています。
 さらにコンポストバーンでは、脚の悪い牛や高産次の牛を管理し、寝起きしやすい環境で飼養しています。「個体に合わせてベストな環境を選んで、ストレスなく過ごしてもらうことが大切」と小泉さんは話してくれました。

予防が高繁殖につながる

 小泉さんは「分娩サイクルが狂ってしまうと平均搾乳日数が下り、経営にも影響してくる」と言い、「個体管理を徹底し、病気のリスクを減らすことで平均産次数を下げないようにし、高繁殖につながっている」と続けてくれました。

PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

RELATED/ 関連記事

記事についてのお問い合わせ