酪農技術情報

マイコプラズマ性乳房炎こうすれば予防できる

JOURNAL 2024.04.19

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

『Dairy Japan 2024年1月号』p.61「連載・農場の儲けを著しく損なう牛の病気 第6回」より

 治癒率が低く、同居牛への感染が極めて強いことで知られるマイコプラズマ性乳房炎。どうすれば予防できるのか—-加藤肇獣医師(NOSAI北海道 ひがし統括センター 釧路東部支所 姉別家畜診療所。以下、著者)が詳しく解説してくださいました。

●マイコプラズマ・フリーにならない理由

 「マイコプラズマは細胞壁を持たず、ほとんどの乳房炎軟膏は治療や予防の効果を示さない」「一度感染すると半永久的に体内に棲みついて、再び乳房炎を起こす」と著者は冒頭でマイコプラズマとマイコプラズマ性乳房炎の特徴を解説しています。
 もし、バルク乳でマイコプラズマが検出されたら、その搾乳牛群には少なくとも1頭のマイコプラズマ性乳房炎感染牛がいることを意味します。しかし、バルク乳からマイコプラズマが検出されなかったとしても、その牛群が「マイコプラズマ・フリー(感染牛なし)」であるとは言えません。なぜなら、マイコプラズマ保菌牛が「治療中であった」「乾乳中であった」「分娩直後であった」などの理由で搾乳されていなかったり、たまたま保菌牛が乳汁中に排菌していなかったり、排菌していても量が少なくて検出限界レベル以下だったりする場合があるからです。
 したがって著者は、バルク乳からマイコプラズマが検出された場合、全頭検査で排菌牛を摘発・淘汰して、それをバルク乳が陰性になるまで繰り返す方法は、「乳頭からの乳房感染を予防するのには極めて有効な方法ではあるが、それだけで牛群をマイコプラズマ・フリーにすることはできない」としています。

●子牛期に感染したマイコプラズマ性肺炎が

 マイコプラズマ性乳房炎の感染経路は先述のように、「乳頭からの乳房」ルートだけではありません。口や鼻から侵入したマイコプラズマが肺に感染して肺炎を引き起こし、肺から全身のあらゆる臓器に感染し、そして乳房に感染するというルートもあります。
 子牛期にマイコプラズマ性肺炎に感染した子牛の諸臓器には、半永久的にマイコプラズマが棲みつきます。その子牛が成牛になったときに、体内に棲みついていたマイコプラズマが乳房内に移動して乳房炎を発症する場合もあります。したがって著者は、子牛期におけるマイコプラズマ性肺炎の予防も必要であることを言及しています。

●衛生的な搾乳 & 子牛に風邪をひかせない

 通常市販されているディッピング剤はマイコプラズマに極めて有効なので、プレおよびポストディッピングを確実に行なうことや、衛生的な搾乳は重要です。
 また、分娩房や治療スペースの清掃・換気すること、そしてバケットミルカーは1搾乳ごとに洗浄・消毒することを著者は必須であるとしています。

 最後に著者は、「マイコプラズマ性乳房炎の予防は、衛生的な搾乳をすること、子牛に風邪をひかせないことに尽きる」と結んでいます。

PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

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