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「はじめまして」のあいさつと、コクシジウム症について①

JOURNAL 2025.07.11

山下祐輔

山下祐輔YamashitaYusuke

 はじめまして。北海道農業共済組合(NOSAI北海道)で臨床獣医師をしている山下祐輔と申します。私は広い北海道のなかでも、道北(旭川から80kmほど北)に位置する上川北エリアを中心に、乳牛、肉牛の一般診療、繁殖検診、損害防止事業に加え、NOSAI北海道では一部の診療所でしか行なっていない人工授精や受精卵移植業務を担当しています。夜間の急患対応も交代制で行なっており、地域の酪農・畜産を24時間・365日サポートできる体制を整えています。

 私のような一臨床獣医師が生産者の皆様に有益な情報をご提供できるかわかりませんが、18年に及ぶ臨床経験のなかで身につけた知識や生産者の方々と乗り越えた困難、成功談や失敗談などを交えながら、皆様が気軽に読める記事を書くことを目指して精一杯やらせていただきますのでよろしくお願いします。

 さて、まずはじめは、私が獣医師として走りたての頃に取り組んだコクシジウム症の予防法について数回に分けてお話ししていこうと思います。

 コクシジウム症は、多くの方が経験されたことがある病気だと思います。主に育成牛で見られる下痢や血便の原因の一つで、卵のような形をした直径50μm程度の寄生虫が小腸や大腸で増殖し、腸粘膜にダメージを与えます。糞便中には“オーシスト”と呼ばれる、次世代の原虫を環境にばら撒いて増やすための抵抗性のあるカプセルのような形で存在します。

 どのくらい抵抗性が強いかというと、外壁は60℃のお湯で30分、80℃で1分、沸騰したお湯でも1、2秒程度暴露させないと破壊されません。効果的な消毒薬も少なく、オルソ剤と逆性石鹸の合剤を組み合わせた製剤くらいしか効果がありません。また、環境中では1、2年感染力を保持するため環境からの完全排除が困難です。

 オーシストがどれくらい糞便中に含まれるかを表す指標として”OPG”という単位がよく使われます。“OPG”は“Oocyst per gram”の略で、糞便1g中に含まれるオーシストの数を表します。

 コクシジウム症を発症した牛の糞便からは、5000から多いときで数十万OPGものオーシストが放出されます。糞便1gからです……。一般的な1から3カ月齢の子牛の1日の糞便量は2から4kgと言われており、下痢をするとその量は1.5から3倍に増えると言われていますので、1日に放出されるオーシストの量が”億単位”になることもあるかと思うとゾッとしますね。

 次回は、環境中にばら撒かれたオーシストが牛の体に入り、どのように増え、腸管にダメージを与えるかについて解説できればと思います。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

山下祐輔

山下祐輔YamashitaYusuke

小動物臨床志望で麻布大学に入学するも、農場実習や産業動物臨床実習をとおして、酪農・畜産の世界に魅せられ、北海道北部の上川北農業共済組合(現北海道農業共済組合道央上川センター上川北支所)に入組して18年。乳牛・肉牛の一般診療、繁殖検診、損害防止事業、人工授精、受精卵移植を担当する傍ら、生産者の素朴な疑問をヒントに調査研究を行なうことが日々の楽しみ。

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