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Jミルクブログ1:季節に応じた需給調整について

JOURNAL 2024.04.26

突然ですが、クイズです。

生乳の生産量が、一年のうち最も多いのはいつでしょうか?
答えは、「都府県では4月頃、北海道では5月下旬から6月頃」です。
反対に、生産量が年間で最も少ないのは、「都府県では8・9月頃、北海道では10月下旬から11月頃」です
グラフで見ると、わかりやすいかと思います。

このグラフは、Jミルクが制作した冊子「日本のミルクサプライチェーン2023」で掲載したものです。平たく言うと、「乳牛は、暑い夏は生産量が低下する」ということです。こう聞いても、「それがどうした?」と思われるかもしれませんが、次のグラフをご覧ください。

多少ごちゃごちゃしていますが……都府県での「生乳生産量」と「牛乳消費量(推計)」のそれぞれ1日当たりの数字をグラフ化したものです。夏場は「(牛乳の)需要が多いが、それに対して(都府県だけでは)生産量は少ない」ことがわかります。逆に、冬場は「(牛乳の)需要が少なく、生産量が需要を上回っている」ということになります。

このため、夏場には北海道から都府県への生乳移送量を増やす、冬場には乳製品加工に振り向ける生乳の量を増やす、といった取り組みによって、季節による需給の変化に対応しています。

 釈迦に説法ですが、生乳は生もの、かつ液体なので基本的に保存が困難です。そのため、たとえわずかでも、そのときの需要に対して生産量が足りなければ、酪農家、乳業メーカーをはじめ、さまざまな立場の人にとってチャンスを失っていることになりますし、スーパーなどでの品薄、欠品にもつながりかねません。逆に、余ってしまえば、最悪の場合、廃棄となってしまいます。どちらに転んでも、チャンスロスや、業界への信頼が失われかねないなどのリスクがあります。ただ一方で、乳牛は生き物ですので、人間の都合に合わせて生乳を出す量を調節するということはできません。そこで先述した、業界全体として取り組む需給調整の役割ということに思いが至ります。

Jミルクは、生乳の需要と供給について、生産者団体や乳業者団体などの情報や議論をもとに、業界全体としての予測をまとめ、年4回公表しています。

過去のものも含めて、ホームページで見られますので、ぜひご覧ください( https://www.j-milk.jp/gyokai/jukyu/index.html#hdg1)。

最新の予測は今年1月26日に公表したもので、

  • さまざまな物価の高騰に伴って家計負担が増し、食料品の消費に影響しており、牛乳乳製品の消費も低調になりそう
  • バターの需要は、外国人観光客や国内の人出の増加などから堅調に推移する一方、脱脂粉乳は発酵乳の需要低迷から対策を講じなければ在庫が積み増す可能性が高く、両品目の需給のアンバランスが続きそう

といったことをあげながら、2024年度の全国の生乳生産量約733万t(前年度比0.3%増)、牛乳類の生産量約447万2000kl(同1.1%減)などと予測しています。

PROFILE/ 筆者プロフィール

酪農・乳業に加え、牛乳販売店の団体など、計23の正会員、95の一般・特定賛助会員(個人を含む、2024年4月現在)でつくる業界団体です。おもに、生乳・牛乳乳製品の需給や生産流通の安定、牛乳乳製品の栄養や健康に関する啓発、学校給食などを通じた牛乳の飲用習慣の定着、国際機関との連携や情報交換、およびそれらの理解促進や広報などを行なっています。最近は、酪農乳業の歴史に関する資料の収集や調査なども行なっています。事務所は東京・お茶の水にあります。

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