こんにちは。神奈川県の石田牧場の石田です。
今年も夏の甲子園が盛り上がっておりますね。皆様の都道府県の代表校の調子はいかがでしょうか。きっと、ご自身が野球経験のある方も大勢いると思いますし、ご子息が経験していたりと、皆様のなかでも毎年楽しみにされている方も多いと思います。
球児のはつらつとしたプレーに感動する一方で、熱中症の危険性の観点から「炎天下の甲子園大会は必要か?」という意見を近年よく耳にするようになりました。
そこで今回は、この問題に対して私見を述べさせていただくとともに、問題解決に対する捉え方について読者の皆様と考えてまいりたいと思います。
私は、
- 球児の身体的健康面
- 球児の精神的健康面
の両方において、甲子園大会の8月開催は「合理的」だと考えております。というよりか、より大局的に、客観的に考えると問題そのものが問題ではないのでは?と思っております。
全国大会の前には当然、地方大会が開催されております。
高野連のホームページによると、「2024年第106回全国高等学校野球選手権地方大会」の参加チーム数は、3715校・3441チームだったそうです。
最も早いところで沖縄大会、南・北北海道大会は6月22日に開幕し、最も遅いところでは東東京大会が7月29日に決勝戦が行なわれ、全国49代表校が決まりました。
ということは、8月に野球をしているチームはわずか1.4%ということになりますね。
残りの98.6%の3年生球児は、夏休み前に引退しているわけです。
「涼しくなる秋季に甲子園をやるべき」
という意見がよく見られますが、そうなると地方大会を夏休みの時期にやらざるを得ません。さらに遅く冬季に、と言っても、引退できない以上、夏休みは練習や練習試合が入ってしまいます。よって、甲子園の秋冬開催のほうが、より大勢の球児を熱中症の危険に晒してしまうことになりかねません。
また、私も元高校球児の一人として言いたいのは、高校生活の2年半、青春の大部分を野球に費やし、3年生の最後の夏休みは高校生らしい生活をしたい!と切に願っておりました。友達と遊びたい、海行きたい、彼女欲しい、車の教習所に通いたい、バイトしてみたい、髪伸ばしたい、塾通いたいetc……引退した後の解放感に満ちた夏休み、2学期は、どれだけ楽しかったか今でも思い出します。もし秋冬開催だとしたら、こうしたこともできなくなってしまうと思うのです。
このように、問題は往々にして目に見える部分だけで議論や判断されがちですが、氷山の一角のように、目に見える部分は実は問題の本質ではなく、目に見えない部分に本質が隠れているものです。
現場でも多くの問題が起こると思います。例えば、従業員の遅刻一つとっても、目に見える「遅刻した」という現象だけで「だらしない!」と感情的になってしまうのではなく、現象の裏に隠れる諸問題に思いを馳せてみる。例えば、何か悩み事があって夜眠れないのかも、とか、残業がちで疲労が取れていないのかも、とか、そう考えると感情的に叱る、という対処が「合理的解決」に結びつかないことがわかりますね。
皆様には釈迦に説法ですが、分娩後の起立不能やケトーシス、四変についても、乾乳期の管理に問題の本質が隠れているわけで、さらに言えば、乾乳に入る前の高BCSに問題が、さらに言えば、空胎日数の長期化に問題が、さらに言えば、前産褥期の管理に問題がと、目に見える現象の裏に問題の本質があります。
高校野球の話題から問題に対する捉え方を考えてみましたが、大局的・本質的・客観的・長期的に物事を捕らえる訓練をすると、いろいろな問題を冷静に対処できるようになりそうですね。
PROFILE/ 筆者プロフィール
石田 陽一Yoichi Ishida
1984年神奈川県生まれ。2007年酪農学園大学卒業後、ニュージーランドの大規模酪農場に1年間勤務の後、家業に就農。
2011年ジェラート屋めぐりを創業、法人化。年間来場者数約6万5千人の牧場を運営。
2014年より現職。石田牧場グループCEO