酪農現場で問題となるテーマの一つが「子牛の下痢と肺炎」です。このテーマに『Dairy Japan』でおなじみの広島大学大学院の杉野利久教授がわかりやすく解説します。
なぜ子牛は下痢や肺炎を起こしやすいのか? その原因と対策をお届けします。
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なぜ下痢や肺炎になりやすい?
なぜ子牛の下痢や肺炎が多いのか、それは環境要因と免疫が関係します。
子牛は生まれたときに免疫はほぼなく、母牛からの初乳や粉末初乳をきちんと飲み、免疫物質(IgG)を獲得することで当面をしのいでいる状態です。このように子牛の免疫力が弱いことを知れば、おのずとどのような環境で管理すれば良いかがわかってきます。
例えば、コロナやインフルエンザが流行っているときに、換気の悪い場所で大勢で飲食をすると、コロナやインフルエンザにかかるリスクが高まるように、さまざまな細菌やウイルスが浮遊する牛舎の換気が悪ければ子牛は下痢や肺炎にかかりやすくなります。とくに冬場は寒さ対策で牛舎を閉め切りにしてしまいがちで、空気の流れが悪くなり、より下痢や肺炎のリスクが高くなります。
免疫力を高めるには?
では、子牛の免疫力を高めるためにはどのようにしたら良いのでしょう? それは初乳をきちんと給与して血中IgG濃度を高めてあげることです。
子牛が初乳中のIgGを吸収できるのはせいぜい24時間以内です、ですから生後6時間までとか時間を決めて初乳をきちんと飲ませましょう。また初乳の品質もBrix値などできちんと確認することも大切です。
子牛が生まれてから初乳給与までの作業ルーチンを決めておくこともお勧めです。
ただし、免疫力を高める以前に子牛を衛生的な環境で管理することが大切です。良好な換気と乾燥してきれいな敷料管理からスタートしましょう。
PROFILE/ 筆者プロフィール
前田朋宏Tomohiro Maeda
Dairy Japan編集部・都内在住。
取材ではいつも「へぇ!」と驚かされることばかり。
業界に入って二十数年。普遍的技術、最新の技術、知恵と工夫、さまざまな側面があるから酪農は楽しい!