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施肥設計に、スラリーや堆肥は含まれている?

JOURNAL 2025.09.11

今村 太一

今村 太一Imamura Taichi

 秋が近づいてきました。北海道では、スラリーや堆肥の散布がそろそろ本格化してくる頃です。
 今回は「施肥設計に、スラリーや堆肥って含めていますか?」という問いかけから始めてみようと思います。

 この記事は、

  • 肥料代をなるべく減らしたい
  • 土や肥料にちょっと興味がある

 そんな酪農家さん向けに書いています。

 スラリーや堆肥も「設計の一部」です

 肥料の設計って、ざっくり言えば「何を、どれくらい入れるか」を決めることですよね。でも、その設計に「スラリーや堆肥」が含まれているか? と聞かれると……実際のところ、抜けていることも多いんじゃないでしょうか。

 スラリーや堆肥にも、ちゃんと窒素、リン酸、カリウム、ミネラルが含まれています。言ってしまえば、すでに持っている肥料です。

施肥設計の3ステップ(とてもシンプル)

 設計を考えるとき、僕はいつもこの三つで整理しています。

  1. どんな畑にしたい?(ゴール)
  2. 今どこにいる?(現状)
  3. 何をしていく?(方法)

 これは当たり前の話で、施肥設計だけじゃなくて、経営や人生にも当てはまると思っています。ナビと一緒ですね。行き先を決めて、現在地を知って、ルートを決める。

1. どんな畑にしたい?

 「去年よりも草を多くとりたい」とか、シンプルに「草の質を上げたい」でも十分です。自分の経営に合った目標を、まず最初に思い描きましょう。

 ここが曖昧だと、「なんとなく去年と同じ」になって、改善のしようがありません。

2. 今の状態を知るには?

 目標が決まったら、次は「今どうなっているか」を見ていきます。

  • 土壌分析(体感も大事です)
  • 昨年使った化学肥料の量と成分
  • 収量や草の質(成分)
  • ラリーや堆肥の分析結果

 ここまで揃うと、かなり設計に落とし込みやすくなります。

 ちなみに、酪農だと「乳検データ」や「エサの設計」も実は関わってくるので、経営全体で見ていく視点も必要になりますね。

3. じゃあ、何をしていく?

 目標と現状がわかったら、ようやく方法を考える番です。

 例えば……

  • 肥料を増やす?減らす?
  • 土のpHを整えるためにカルシウムを入れる?
  • 過剰気味なカリを抑える?

 ここでやっと、肥料を「足す・引く」判断ができるわけです。

スラリーや堆肥、分析してますか?

 僕の実感では、スラリーや堆肥を成分分析している酪農家さんは、まだ少ないです。でも実際には、アンモニア態窒素や硝酸態窒素を「窒素」に換算できますし、リン・カリも同様です。

 つまり、化学肥料を減らす根拠になるんです。

 とくに「カリ」は過剰気味なケースが非常に多いので、スラリーや堆肥の中身を見直すだけで「もうカリは要らない」って結論になることも珍しくありません。

感覚も、大事。でも言語化しよう。

 施肥設計は、数字だけじゃなくて感覚も大切だと思っています。でも、その感覚を言葉にしておくことで、次につながります。

例えば……

  • 「土が柔らかい=菌が多い。だから肥料は控えよう」
  • 「カチカチで乾燥気味。数値上は肥料が足りないけど、堆肥を倍入れてみる」

 こんな感じでいいんです。

 体感を含めた判断も、振り返れるように言語化しておくと、設計の一部として残せます。

最後に:皆さんの感覚は、正しいです

 個人的な意見ですが、酪農家さんの感覚って、ほとんどズレていません。現場で毎日見て触れているからこそ、信じられるものがあるんだと思っています。

 だからこそ、その感覚に分析をちょっと足すだけで、さらに強い施肥設計ができる。

 秋の散布前に、一度だけでも、スラリーや堆肥の分析やってみてはいかがでしょう?

PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一

今村 太一Imamura Taichi

標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。

経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。

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