
皆様お仕事お疲れさまです。あかばね動物クリニックの宮島です。
初乳に関してのお話は1回お休みして、最近感動した出来事について書きたいと思います。
らくコネ4回目で、暑熱に強い「スリック牛」について書きました。その子が北海道の預託先から帰ってきて、無事に初めての出産を終えました。
北海道から帰ってきたときは、寒い環境に適応したのか、毛の少ない特徴がわかりにくくなっていたようですが、分娩したら元のつるっとした感じの牛に戻りました。
繁殖検診時に「先生、この牛フレッシュチェックには早いですが、手を入れてみます?」と農家の方が言ってくれたので手を入れてみました。
するとほかの牛、とくにさっき手を入れたばかりの初産牛とは明らかに体温が違います。すぐ「体温計をください!」とお願いをして、体温を測定してみたところ、熱いと感じた牛は40℃、スリック牛は38.9℃でした。ちなみにその日の最高気温は36℃。
農家の方いわく、「毎日体温を測っているけれど、39℃超えないですよ」とのこと。そこで「試験牛、対照牛を設けて体温を測定してもらえますか?」とお願いしたところ、1週間後に素敵なデータを送ってくれました。
それがグラフ①から③になります。
①は朝6:30の体温です。スリック牛は朝から体温が低めです。対照牛の中にはすでに39℃以上の牛がいます。

②は昼14:30の体温です。とくに8月6日は暑い日でしたが、昼を過ぎると対照牛は皆、40℃を超えています。そんな暑い日でもスリック牛は39℃でした。

スリック牛は体温の変化が少ないのでは? と思い、朝と昼の体温差をグラフにしたものが③になります。スリック牛は8月6日に1℃の体温差がありますが、その日以外は差が少ないです。対照牛は5日から7日までは概ね1℃以上の差があります。

以前の文献を読み返してみると、スリック牛はただ毛が短いだけではなく、夏場における発汗量が多いことがわかっています。熱を放散する能力が高いのです。
実際にスリック牛の直腸に手を入れて、肌身でその体温に触れると、「この牛は本当に高温に順応する能力が高いのかも!」と強く感じることができました。
当然、この1頭だけで物事を判断してはいけないのはわかっています。そして今後、乳量や繁殖のデータを見ていかなければならないことは十分に承知しています。けれど、よだれを流し、ぜーぜーしている牛を横目に、文字どおり涼しい顔をしているこの牛を見てると、その可能性に期待せずにはいられなくなるのでした。
PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。