
4月も終盤、いよいよ畑に入る季節ですね。堆肥やスラリー、肥料の準備に、皆さんも慌ただしい日々を過ごされていることと思います。
今回は、そんな「肥料」について、少し違った視点から考えてみたいと思います。
「糖」がキーワード
植物の成長に必要なものといえば、小学校の理科で習った「光・空気・水・肥料」の4要素。でも、この四つから作られる重要なものが何か、考えたことはあるでしょうか?
答えは「糖」です。
植物は、光合成によって糖を作ります。
光(太陽のエネルギー)と空気(二酸化炭素)、そして水が揃えば、植物は糖を合成し、それをエネルギーとして使って自らを育てていきます。
糖は植物にとって、万能ツール。むしろほぼ全てです。
•生きるためのエネルギー源
•蛋白質やアミノ酸の材料
•実・花・根の成長、土壌菌への分配
•セルロースやリグニンなど、体を構成する物質の素材
これらすべてに糖が使われています。
つまり、糖さえあれば、植物はある程度自力で育っていけるのです。しかし現実には、光合成がうまくいかない日もあります。曇天が続いたり、大雨で根が弱ったり、温度が高すぎたり……
そんな環境下では、糖の生産が不安定になります。
ここで一般的には「肥料で補う」という判断になります。そのため、前提として「肥料も必要だ」と言っているのです。
牧草の施肥のポイントも「糖」
実は植物が肥料(主に窒素)を使用するとき、糖が足りているかどうかがとても重要な判断ポイントになります。
植物は根から窒素を取り入れるとき「体を削ってでも糖を捻出しよう」とします。そうして、植物自体の糖度が落ちていくのです(糖度が落ちる原因はほかにもあるのですが、次回へ持ち越しさせてください)。
窒素が入ることは、一時的には急速に成長して見えますが、長期的には植物も土も弱らせてしまいます。
余談ですが、この一連の流れは牛が栄養不足の時に体を削るのとほぼ一緒です。牛がエサを食べた後、ルーメン内では「蛋白質+糖=エネルギー」という現象が起こっています。土の中も、牛の胃袋の中も、不思議と似た構造になっているのが興味深いところです。
だからこそ、まず考えるべきは植物を弱らせないこと。つまり「どうやって糖を作れるか」なんです。
次回は、よく効くとされる「窒素」について。糖との関係、光合成効率が高まる構造など、少し深掘りしてみたいと思います。
PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一Imamura Taichi
標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。
経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。