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酪農教育ファーム活動で子ども達に伝えたい「3つのしょく」Vol.3

JOURNAL 2025.01.30

石田 陽一

石田 陽一Yoichi Ishida

 前回まで2回にわたって、酪農教育ファーム活動で子ども達の年齢に沿って伝えたいテーマをご紹介しました。今回は全年代の子ども達を対象に、酪農教育ファーム活動をキャリア教育にまで発展させられる可能性についてお話ししたいと思います。

 キャリア教育とは、子ども達が社会の一員として自立して生きていくために必要な能力や態度を育てる教育とされています。つまり、単なる学力や仕事の技術習得ではなく、勤労観や職業観を育んだり、壁に当たっても前向きに捉え解決する力、自らを動機付けできる力を養うことを目的としています。

 私が教育ファームで子ども達とお話していると、決まって子ども達からこのような雰囲気を感じます。

「なんで石田さんはこんなに大変なお仕事をしているのに楽しそうなんだろう? 」

 何十頭もの牛達の命を預かり、朝から夜まで日曜日もお正月も関係なく牛のお世話をしている。でも、私はこの仕事が好きで毎日楽しいので、きっとお話しているときにウキウキオーラが出てしまっているのでしょう。毎日仕方なく会社へ出かけ、クタクタで帰宅、日曜日は昼までゴロゴロしているといったお父さん像と重ね合わせている子もいるかもしれません。

 大人はなぜ、何のために働くのか。子ども達のまだ真っ白なページに、どんな職業観を印象付けるかは非常に重要です。生活のためにはお金が必要だから働かなくてはいけない。間違ってはいませんが、そのような価値観で人生の大半を費やすことは大変です(実際そのような大人は多いと思いますが)。

 私は子ども達に、「はたらく」とは「端(はた・まわり)」を「楽(らく・楽しくする)」ことだと伝えています。つまり、どんな仕事も、誰かの役に立ち、誰かを楽しくすることが目的であって、その結果でお給料がいただけたり、周りから感謝されて頼りにされるんだよ。そして、自分も見えない誰かの仕事によって生かされているんだよ、と。

 「バスの運転手は移動手段を、先生は知識を、警察官は安全を、スポーツ選手は感動を、そして酪農家はおいしい牛乳を皆に届ける。だから、皆が元気であれば仕事は喜びなのです。皆がどんなお仕事を選んでも、誰の役に立っているか、誰に喜んでもらえるか考えながら仕事をすると、大変な仕事でもとても楽しい仕事になるよ」

 すべての酪農家は子ども達のキャリア教育に向いている、と私は思っています。私達酪農家は、生活のすべてが乳牛を中心に置いており、お盆もお正月も変わらず牛のために働きます。夜中に分娩があればずっと付きっ切りで、良いエサを作るためなら、翌日が雨予報であれば徹夜で収穫作業も厭いません。

 すべては牛のため。そんな私達にしか伝えられないメッセージを、子ども達に伝えてまいりましょう。

PROFILE/ 筆者プロフィール

石田 陽一

石田 陽一Yoichi Ishida

1984年神奈川県生まれ。2007年酪農学園大学卒業後、ニュージーランドの大規模酪農場に1年間勤務の後、家業に就農。
2011年ジェラート屋めぐりを創業、法人化。年間来場者数約6万5千人の牧場を運営。
2014年より現職。石田牧場グループCEO

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