例年、秋はどこの学校も課外活動が盛んになる季節で、わが牧場には今シーズンも県内外から、四つの小中学校、約250名もの子ども達が体験に来てくれました。
学年によって、子ども達が受け取れるメッセージはさまざまです。そこで本日は、就農当時に教育ファーム活動の大先輩に教えていただき、今でも大切にしている「3つのしょく」についてお話しします。
「3つのしょく」とは、学年に応じた体験で伝えたいゴールを表しています。
まず一つ目は「触る」の触です。
幼稚園児から小学校低学年の子ども達を受け入れたときは、とにかく牛に触ってみて、「温かかった」「固かった」「柔らかかった」「フワフワ」「ザラザラ」「ツルツル」「スベスベ」。この触感を感じてもらえれば体験としては大合格です。余計な言葉は必要ありません。
そして二つ目は「食べる」の食です。
これは小学校中学年の生徒さんを受け入れるときにメインテーマにしています。普段飲んでいる牛乳を、目の前の牛さんが作ってくれている。その牛さんに草をあげてみたら、食べてくれた! 次の次の日の給食には、あの牛さんの牛乳が入っているのかな。草→牛→牛乳→人間と、食のめぐりを連想してもらえるよう寄り添います。また、「牛は何歳まで生きるんですか?」や「オス牛さんはどこに行くんですか?」といった質問もあります。そんなときは、牛は牛乳が搾れなくなるとお肉になること、オス牛さんは2歳でお肉になることを、ゆっくり伝えます。伝えた瞬間は、ちょっとシュンとした空気に包まれます。ここでもう一言付け加えてあげるのです。
「牛さん達は、最後の最後に自分の命をふりしぼって、みんなの栄養になるんだよね。みんながお肉を食べたら、筋肉や血になって、みんなの体を作るんだね。牛も豚も鶏も魚もみんなそう。みんなが美味しく残さず食べてくれたら、みんなの命としてつながるんだ。だから、お皿にのぼった食べ物は残さず食べてあげることが、一番大切だよ」
伝え方はさまざまあると思いますが、「いただきます」とは「あなたの命を私の命にかえさせていただきます」という意味であることを、なるべく噛み砕いて伝えています。
また、最近の子ども達は3年生くらいでSDGsということを勉強しています。なので、牛は人が食べられないものを食べて、人が食べられる牛乳やお肉に変えてくれること。そしてうんちも堆肥になり、自分の牧草や、美味しい野菜やお米を作る、とってもエコな動物! 牛ってすごいね!ともメッセージしています。
長くなってしまいそうなので、三つ目の「しょく」については、また次回お話しいたします。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
石田 陽一Yoichi Ishida
1984年神奈川県生まれ。2007年酪農学園大学卒業後、ニュージーランドの大規模酪農場に1年間勤務の後、家業に就農。
2011年ジェラート屋めぐりを創業、法人化。年間来場者数約6万5千人の牧場を運営。
2014年より現職。石田牧場グループCEO