RSの肺炎
JOURNAL
11月になりましたが、今年の11月はかなり暑いです。季節は夏と冬だけになりそうです。そんな暑い11月は過去にもありました。それは、2014年の11月です。
まだ、診療を中心に仕事をしていた当時、この時期はちょっとの気温差ですぐに子牛の肺炎治療頭数が増えるので、朝晩の温度変化、昨日と今日の温度差を非常に気にしておりました。当然、寒くなると肺炎は増えるのですが、2014年の11月は小春日和が続き、本当に過ごしやすい冬の始まりでした。農家さんと「今年の冬は肺炎が少なくて良いですね」と話しをしていたのが思い返されます(図1、2)。
図1 2012年から2015年冬の平均気温と湿度によるTHIの推移。赤線が2014年11月末に一旦上がってから12月前半に向けて一気にTHIが低下した。
図2。2014年11月から12月平均気温湿度THI推移。平均気温湿度THIで50以下になると肺炎の発生が増えるのかもしれない。
ところが、そんな余裕は12月に入り吹き飛びました。12月に入ると状況が一転しました。最高気温が10度以下の日が続き、渥美半島特有の冬の風も吹き荒れるようなりました。そうなると肺炎の治療が増えます(図3)。この図は、肺炎の治療頭数ではなく、治療回数のグラフなのですが、2014年は12月に爆発的に増加したことがよくわかります。
図3 2014年の爆発的肺炎治療回数。ひたすら治療の日
あっという間に広がる肺炎。めちゃくちゃ増える治療頭数。これをわれわれは「集団肺炎」と呼びます。「集団肺炎」は非常に嫌なフレーズです。この年は、12月初めから大みそか、そして元旦に至るまで、ひたすら牛を捕まえて治療するという修行のような診療に追われました。
原因を突き止めないといけません。集団肺炎が発生した際、家畜保健所さんに来ていただき、どのような菌やウイルスが原因なのかを調べてもらいます。すると、とても高い確率でRSウイルスが原因と言われます。
子牛に対して5種混合ワクチンなど投与していたのですが、根本的に肺炎対策を変更する必要に迫られました。そこで、ワクチンメーカーの獣医さんと相談し、翌年からワクチンの接種方法を変更することにしました。(続く)
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PROFILE/ 筆者プロフィール
宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。