酪農技術情報

サルモネラ:どのようにして農場内が汚染されるのか

JOURNAL 2024.10.15

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

Dairy Japan 20249月号』p33「《連載》最大の難敵サルモネラ菌に勝つ4」より

 サルモネラ菌が農場内でどのように感染していくのか—-加藤肇獣医師(NOSAI北海道 ひがし統括センター 釧路東部支所 姉別家畜診療所)が詳しく解説してくださいました。以下、抜粋・要約。

経口感染に注意

 サルモネラ菌の感染経路は「糞便」による経口感染が最も多く、感染源は家畜やげっ歯類、汚染された飼料などです。

分娩時の感染も

 主だったサルモネラ菌は、大きなリンパ組織から分離されます。
 生まれたばかりの子牛からも高率で分離されます。これは分娩時の母牛の胎盤や羊水および血液からの感染と考えられます。周産期において、サルモネラ菌は母牛の体内で活発化し、分娩期は最も多くの菌を排出します。
 S.typhimurium(ST)、S.Neuport(SN)、S.dublin(SD)は、初乳や常乳を介して新生子牛に感染します。

SDは循環し風土化する

 SDは、慢性の腸内感染や乳房内感染として「キャリア状態」(発症せずに感染している状態)となり、糞便や乳汁を汚染します。
 「宿主適合型サルモネラ症」(牛の体内に常在菌のように終生棲み着くサルモネラ症)は循環型の風土病になります。宿主適合型サルモネラ菌に感染したキャリア牛は、常にあるいは断続的に菌を環境に撒き散らします。
 排菌しない感染牛は「持続性キャリア」(何回糞便検査をしても陰性だが、菌を体内のリンパ組織に持っている牛)と呼ばれます。持続性キャリアは腸管や腸間膜リンパ節にサルモネラ菌が終生棲み着いて、あるいは乳房内感染を起こして、糞便や乳汁内に排菌します。ストレスにより糞便や乳汁に排菌したり、再発したりします。

酸性化初乳の有効性

 乳牛が一番多くの菌を排出するのは分娩期です。したがって分娩房は最も子牛が感染を受けやすい場所です。
 殺菌していない初乳の給与は、子牛へSD感染を起こす可能性があります。初乳や常乳をpH4.5以下の状態で12時間酸化させることで、サルモネラ菌やマイコプラズマを殺菌することが可能です。
 最近、初乳の殺菌方法として注目されている「酸性化初乳」は、初乳中のIgGの吸収率および免疫活性に影響することなく、初乳中のほとんどの細菌を死滅させることが可能です。
※「酸性化初乳」の作り方は本誌参照。

環境汚染について

 感染牛は常に環境の菌量を増加させ、同居牛を感染させます。
 汚染した環境の清浄化は大変難しいです。サルモネラ菌は直射日光の当たらない湿った場所、水溜りや排水路に数カ月生存するからです。サルモネラ菌に対しては直射日光や熱湯消毒が有効な除去方法です。
 牛舎環境の消毒は、糞便をきれいに洗い流すことが重要になります。
※「牛舎環境の消毒事例」は本誌参照。

PROFILE/ 筆者プロフィール

小川諒平

小川諒平Ryohei Ogawa

DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。

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