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Kalm角山ブログ6:食育=ファン作り

JOURNAL 2024.10.02

川口谷 仁

川口谷 仁Jin Kwaguchiya

酪農教育ファーム

私は2008年から「酪農教育ファーム」の認証を取得し、「酪農ファシリテーター」として牧場体験や視察を受け入れています。Kalm角山を立ち上げてからも、園児から大学生まで年間800人を超える方々を受け入れています。

「酪農教育ファーム」の目的は、「酪農を通して、食やしごと、いのちの学びを支援する」です。

昨今、私達酪農業界を取り巻く環境は劇的に変化しています。それはまさに「大災害級」とも言うべきコントロール不可能な外的要因によるものが大きく影響しています。

そのなかで、生乳需給のバランスが崩れ「生乳廃棄」「牛の淘汰」「脱脂粉乳の過剰在庫」「バター不足による緊急輸入」などの言葉が世間を騒がせています。

これらの現象は、現場にいる私達酪農家でさえ理解に苦しむのに、消費者の皆さんはどのように感じているのでしょうか。

酪農教育ファームの様子

生乳の価格は適正?

そこで出てきた議論が「適正化価格」です。私 達生産者が生乳1kgを生産し、販売する価格は経費がしっかりと反映されて適正なのか。消費者の皆さんが購入する牛乳の価格は適正なのか。という議論です。当然、私 達酪農家は、経費をしっかりと反映し再生産可能な価格が適正となります。消費者にとっては、安定したタンパク源である基礎食料として「誰でも安心して購入可能」な価格が適正となるでしょう。しかしながら、そこには当然「ギャップ」が生まれ、「生産費が反映されず赤字」または「高い牛乳は買えない」となるわけです。

私達酪農家は、この不均衡を改善しようと、経費削減の取り組みや政府に助成を働きかけるなど日々努力を重ねてきました。と同時に、私達酪農家は消費者の皆さんに対しできることはないでしょうか。

「牛乳が高ければ豆乳で代用する」「動物性タンパクは環境負荷が大きいから植物性タンパクを摂取すべき」「動物の命を奪うべきではない」

このような議論がなぜ起きるのでしょうか。私達酪農家であれば、生きていくうえでの必須アミノ酸はどこから摂取可能か。麦や大豆も動物からの有機物がなければ循環が途切れてしまう。いのちをいただくからこそ、この地球上の食物連鎖において循環が可能であり、「いただきます」の感謝の言葉を理解することができる。と理解できます。

消費者に伝えたい

しかし、消費者が限られた情報の中でお金を払えば食料が購入可能な現在、誰が「食といのちの繋がり」を理解できるのでしょうか。もしも、消費者の多くが農業の、酪農のファンであり、食といのちがつながっていることを理解していれば、このような「悲しい」議論にはならないと感じるのです。

私は東京生まれ東京育ちです。北海道産と表記された農畜産物は何でも美味しいと思っていました。でも、生産者となったとき「ショック」を受けたのです。コンビニで簡単に購入できる食べ物の「背景」に。消費者として無知であり、お金さえ払えば何でも購入可能と思っていた自分が生産現場を知り、このままでは食料を買えなくなる時代が来るのではないかと不安になったのです。

美味しい牛乳、お肉、野菜だけではなく、それらを生産する「現場」のファン作りが大切であり、ファンが増えることによって、私達の作る生産物に「大きな価値」を見出してくれるのでないかと感じます。

私はどのような立場にあるとしても、「食育=ファン作り」はライフワークとしていきたいと思っています。

PROFILE/ 筆者プロフィール

川口谷 仁

川口谷 仁Jin Kwaguchiya

妻の実家である北海道の酪農業を継ぐため移住。食の安定供給への限界を感じ地域の5軒の酪農家と共同法人「(株)Kalm 角山(カーム カクヤマ)」を設立。
北海道移住23年で、飼養管理頭数1000頭、売上10億、出荷乳量6800㌧の農場を経営する。
(株)Kalm 角山 代表取締役
北のオーガニックファーム(株)代表取締役

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