育成牛の体重や体尺を継続的に測定すると、発育状況や飼養管理の効果を客観的に確認できます。しかし、従来の測定には専用機器や複数人での作業が必要となるため、「重要性は理解しているものの、継続して測定できない」という酪農現場も少なくありません。
今回は、写真撮影によって牛の体重や体尺を推計できるアプリ「MoozyFitTM(ムージーフィット)」の特徴と、酪農現場で期待される活用方法を紹介します。
『体尺測定「Dairy Japan2026年8月号」』 取材協力:BIPROGY株式会社、杉野利久教授(広島大学 酪農エコシステム技術開発センター)、要約。
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牛の「体尺測定」が重要な理由

「牛体測定」とは、牛の体重や体高、体長、胸囲などを測定し、発育状態や体格を数値で確認する作業です。哺育・育成期の発育は、繁殖開始時期や初産月齢、その後の生乳生産にも関係します。
日頃から牛を見ていると、発育が遅れていても変化に気づきにくいことがあります。見た目では順調に成長しているように見えても、実際に測定すると、個体差が大きかったり、増体が停滞していたりするケースもあります。
継続的に体重や体尺を記録することで、次のような点を確認しやすくなります。
- 哺乳量が適切だったか
- 離乳後に飼料を十分摂取できているか
- 飼料変更後に発育が改善したか
- 牛群内で発育が遅れている個体はいないか
- 現在の飼養管理が適切か
体重を測ること自体が目的ではありません。測定結果から飼養管理の課題を見つけ、次の改善につなげることが大切です。
従来の「体尺測定」の課題

体尺測定の重要性が認識されていても、酪農現場で継続的に実施することは簡単ではありません。
専用機器や複数人での作業が必要
従来の体尺測定では、測定器具を使って複数の部位を一つずつ測る必要があります。
体重を測定する場合は、牛を体重計まで誘導して保定しなければならず、複数人での作業になることもあります。専用の体重計や測定機器の導入費用も、農場にとって負担となります。
測定者によって数値が変わる
体高や体長などは、測定する位置や牛の姿勢によって数値が変化します。同じ牛を測定しても、測定者によって測定箇所が異なり、結果にバラツキが生じることがあります。
牛や作業者に負担がかかる
牛の移動や拘束は、牛にストレスを与える可能性があります。また、大型の牛を誘導・保定する作業では、作業者の安全にも注意しなければなりません。
こうした時間、費用、人手、安全面の課題が、継続的な体尺測定を難しくしています。
写真で体重・体尺を推計する「MoozyFit」とは

MoozyFitは、BIPROGY株式会社、全国酪農業協同組合連合会、広島大学、AMTS社が共同で開発した牛体測定アプリです。iPad Proで牛を撮影することで、体重や体尺を推計し、測定結果をデータとして蓄積・管理できます。
推計できるのは、次の9項目です。
| 推計項目 | 内容 |
| 体重 | 牛の推計体重 |
| 体高 | 地面からき甲部までの高さ |
| 十字部高 | 地面から十字部までの高さ |
| 体長 | 牛体の前後方向の長さ |
| 水平体長 | 水平方向に測った体長 |
| 胸囲 | 胸部周辺の長さ |
| 胸深 | 背中から胸下部までの深さ |
| 体深 | 牛体の深さ |
| 腰角幅 | 左右の腰角間の幅 |
撮影した画像は、独自の牛体推定アルゴリズムによって解析されます。自動で設定された測定ポイントにズレがある場合は、手動で修正することも可能です。測定者の経験に左右されにくく、誰が撮影しても一定の方法でデータを取得しやすいことが特徴です。
MoozyFitに期待される3つの活用方法
1.育成牛の発育状況を確認する
哺育・育成期に継続して撮影すると、牛ごとの成長推移を確認できます。
標準的な発育曲線や牛群内のデータと比較することで、発育が遅れている個体や、成長が停滞している時期を見つけやすくなります。
例えば、次のような管理の評価に活用できます。
- 哺乳プログラム変更後の増体
- 離乳後の飼料摂取状況
- 飼料内容を変更した後の成長
- 飼養環境を改善した後の変化
発育の遅れを早期に把握できれば、哺乳量や飼料内容、飼養環境を見直すきっかけになります。
2.搾乳牛の飼料設計に活用する
搾乳牛の体重を定期的に測定するには、大きな手間がかかります。写真撮影で個体ごとの体重や体格を把握できれば、牛群全体を一律に管理するだけでなく、個体の状態に応じた飼料設計を検討しやすくなります。
MoozyFitで取得したデータは、より精密な栄養管理を行うための基礎情報としても活用が期待されています。
3.専門家の指導や農場分析に活用する
MoozyFitは、酪農家だけでなく、獣医師や飼料コンサルタント、普及員などによる活用も期待されています。
専門家が巡回時に継続してデータを取得すれば、次のような分析が可能です。
- 牛群内の個体比較
- 過去のデータとの比較
- 飼料変更前後の比較
- 農場ごとの発育状況の比較
- 客観的な数値に基づく改善提案
経験や目視による評価に測定データを組み合わせることで、より具体的な指導や提案につなげられる可能性があります。
牛体データを飼養管理の改善につなげる
MoozyFitは、単に牛の体重や体尺を測るためだけのアプリではありません。測定データを継続して蓄積することで、牛の成長や飼養管理の結果を客観的に確認するための入口になります。
将来的には、MoozyFitで取得したデータと、乳量予測や牛舎環境、飼料設計などの情報を連携させる構想も進められています。
感覚や経験は、酪農現場にとって大切な判断材料です。そこに客観的な牛体データを加えることで、発育状況の変化や管理上の課題を、より早く発見できる可能性があります。
まとめ

牛の体重や体尺を継続的に測定することは、育成牛の発育管理や搾乳牛の飼料設計を考えるうえで重要です。一方、従来の測定方法には、専用機器の費用、複数人での作業、測定値のバラツキ、牛へのストレスなどの課題がありました。
MoozyFitを活用すれば、iPad Proによる撮影から体重や体尺を推計し、データを蓄積できます。継続的に測定し、得られた数値を哺乳管理や飼料設計、飼養環境の改善につなげることが、牛の健全な発育と生産性向上への第一歩となります。
▼詳しい実践方法は『Dairy Japan2026年8月号』に掲載しています。
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