『Dairy Japan 2024年9月号』p16「ミルキングシステムの総点検」より
ミルカーの洗浄について、今吉正登さん(大山乳業農業協同組合 酪農指導部 指導次長)が詳しく解説してくださいました。以下、抜粋・要約。
洗剤は適正な希釈で
一般的に酪農家さんが使う洗剤は、「アルカリ洗剤」と「酸性洗剤」があります。
「アルカリ洗剤」は一般的に0.5%に希釈することになっていますが、メーカーによって希釈濃度が異なる場合もあるので、お使いの洗剤の裏書をよく確認してください。
「酸性洗剤」は0.2%から1.0%まで希釈濃度が大きく異なります。「酸リンス」のように毎日使うものは薄く、3日に1回や週に2回使用する場合は0.5%から1.0%と高い濃度で使用することになります。
「アルカリ洗剤」の後に「酸性洗剤」にしなければならないのに、「今日は酸性の日」だということで、「アルカリ洗剤」を使わずに、いきなり「酸性洗剤」を使って洗浄するケースが見られます。そうすると、酸性によって脂肪が凝集したり凝固してしまって、落ちにくくなってしまいます。
「アルカリ洗剤」で脂肪と蛋白質を落としたうえで「酸性洗剤」を使わないと効果は激減します。ですから、必ず「アルカリ洗剤」で一度洗ってから「酸性洗剤」を使うようにしてください。
洗浄槽を正しく使う
洗浄槽のブリッジの重要性についてお話しします。
洗浄槽にはすべてブリッジがついています。このブリッジは非常に重要な役割を果たしていて、ミルカーを真っすぐにし、洗浄槽の底面から少し浮いた状態にする役割があります。もしブリッジが外れてしまったりすると、ミルカーが底面に着いてしまったり、1本だけ浮いてしまうことがあり、エア噛みしてしまいミルカー全体が洗えなくなってしまいます。
したがって、洗浄時には、しっかりとミルカーをブリッジに付けることが重要です。
バケットミルカーの洗浄
乳房炎で困っている方は、バケットミルカーの洗浄を見直してみましょう。
まず、ミルククローの外側の汚れをしっかりと落とします。流水を使ってしっかりとミルククローとシェルの外側を掃除します。
外側を洗浄した後は、「すすぎ」「洗浄」「すすぎ」のバケツを用意します。「すすぎ」では、しっかりとエアブラシをかけます。バケツの中でライナーを上げたり下げたりすることによって、空気が流入して、物理的なこすり洗いと同じ作用ができます。
次に、「洗浄」(洗剤溶液)のバケツに入れます。このときも「すすぎ」と同様に、しっかりとエアブラシをかけてください。最後に「すすぎ」です。
バケットミルカーは分娩直後の乳牛を搾る非常に重要な機械です。「アルカリ洗剤」だけではなく、「酸性洗剤」も使ってしっかりと洗浄をしてください。
機器による計測と調整
ミルカーの洗浄には、適正な水量や適切な洗剤濃度、そして洗浄温度などが関係します。洗浄が正しくできているかを専門家と調べてみることをお勧めします。
私は現場でラクトコーダを使ってミルカー洗浄を確認することがあります。そのデータの確認や各種調整は、ミルカーの専門家にお願いすることが一般的です。「乳質が改善しない」「乳房炎が出る」といった問題があれば、一度、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
私のYouTubeチャンネルでは、さまざまな現場のトラブルシュートを解説しています。ミルカー洗浄についても詳しく解説していますので、ぜひ、ご視聴ください。
【YouTubeチャンネル 今吉正登】
https://www.youtube.com/@%E4%BB%8A%E5%90%89%E6%AD%A3%E7%99%BB
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PROFILE/ 筆者プロフィール
小川諒平Ryohei Ogawa
DairyJapan編集部。
1994年生まれ、千葉県出身で大学まで陸上競技(走り高跳び)に励む。
趣味はサッカー観戦。
取材先で刺激を受けながら日々奮闘中。
皆さんに有益な情報を届けるために全国各地にうかがいます。