皆様、お仕事お疲れさまです。
まだ少し暑いですが、ようやく気温が下がってきました。渥美半島の乳牛にとっては待望の涼しい季節の到来です。一気に食欲が増し、乳量がぐんぐん増えてきているのは嬉しいのですが、あちこちでお腹の調子がおかしくなる牛がいます。
涼しい季節がやってくると、今度はサシバエの出現に悩まされます。日中、牛はサシバエを避けて固まります。だいたい12月初めまでサシバエに悩まされます。サシバエも嫌いです。
前回に引き続き、「肺炎」に関して書こうと思います。肺炎の原因の中で、嫌だなと思っているのは細かすぎる敷料です。キリっと気温が下がった冬の朝、朝日に照らされて牛の周りで細かい粒子がキラキラ光っているのが見えます。それらを人間よりかなり低い位置に住んでいる子牛達は吸い込んだり、吐き出したりしながら過ごしています。
本当は麦稈などがあれば良いのでしょうが、都府県ではそのような素敵な敷料はなく、おが粉を使っています。たまに木の皮(バーク)を使っている農場もありますが、ほとんどおが粉です。
話は外れますが、品質の悪いおが粉はタチの悪い乳房炎の原因にもなります。大腸菌やクレブシエラの乳房炎が発生した際には、原因を突き止める一環として、おが粉を水に浸してその上澄みを培地に塗るなどしていました。
びっくりするくらい菌が生えるおが粉もあれば、何一つ菌が生えないおが粉もあります。びっしり菌が生えるおが粉は、乳房炎の原因にもなりますが、肺炎の原因になるにも違いありません。菌がいるかいないかにかかわらず、あのような細かいダストを吸い込んでいれば呼吸に良いはずがありません。
とくに敷料を交換した後、子牛が「ひゃっほーい!」と新しい敷料をまき散らしながら興奮して走りまわっています。あの喜びの舞は、肺炎の原因になっている可能性があります。
そのようなおが粉由来の肺炎を防止するために、せっかく乾いた敷料を敷いた観点からすれば本末転倒なのかもしれませんが、細霧を撒く方法があります(写真1)。これにより空気はだいぶ落ち着きます。
細霧がない場合でも、軽くジョウロなどで水を撒いて空気を落ち着かせる手段もありだと思います(写真2)。
写真1 細霧システムがある子牛牛舎では、敷料交換後に空気を鎮めるために細霧を稼働させます(肺炎を防ぐためには屋根下の部分はもう少し綺麗にしたほうが良いと思われます)
写真2 敷料交換後の躍動感あふれる子牛達。おが粉を鎮めるためにジョウロで軽く散水をお願いしました
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PROFILE/ 筆者プロフィール
宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。