こんにちは、酪農学園大学ルミノロジー研究室の泉です。先日、千葉県の幕張メッセで開催された日本最大級の農業関連展示会「農業WEEK」を訪問してきました。
農業のありとあらゆる分野について、さまざまな資材・機械・設備がところ狭しと展示されていました。
園芸分野におけるスマート農業に関する設備や農作物の流通のハイテク化など、普段目にすることのない展示を見るだけで、大いに刺激を受けました。
畜産、とくに乳牛分野はと言いますと、スペース的にも出展数的にも少し寂しい感じでしたが、さまざまな企業の方と名刺交換することができました。そのうちの何社かからは、その後にご連絡をいただき、面談の日取りも決まりました。こういった展示会に足を運ぶと、新たな出会いが広がります。
さて、今回の展示会で「これは来ている!」と私が感じた分野をご紹介します。
それは、ペレット堆肥です。
複数の企業が堆肥をペレット化する装置やシステムを出展していました。写真のように、まるで化成肥料のように綺麗なでき上がりです。
ペレット製造機。実規模向けの大型サイズも展示されていました。
ペレット堆肥システム、なぜここに来てアツいのでしょうか?
それは、化成肥料の価格高騰です。今は畑作や園芸などの耕種農家が化成肥料に代わる有機肥料を求めています。化成肥料価格が高すぎて経営を圧迫しているからです。代替品として考えられるのは、家畜糞尿だったり、下水道の汚泥だったりしています。ただし、これらの有機肥料はウエットなので流通に乗せにくい、保管がしにくい、散布しにくい、というデメリットがあります。それらを解消するのがペレット堆肥です。経常的に流通・保管が容易で、ブロキャスや各種プランターで散布できるのがペレット堆肥の最大のメリットです。
このシステムを導入すると本学の堆肥を高く売れる! と思って担当者に訊いてみましたが、世間はそこまで甘くありませんでした。ペレット整形マシーンに投入する堆肥は、水分20%以下にまで乾いている必要があるとのことでした。本州などでよく見られる戻し堆肥に使えるようなサラサラの状態です。昔ながらの堆肥舎に積んで切り返しただけでは、水分は70~80%ありますのでペレット化は不可能です。ビジネスチャンスと思ったのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
導入には障壁がありますが、化成肥料の価格高騰に加え、国が定める地球温暖化やSDGsの観点からの肥料投入量削減に向けて、ペレット堆肥はホットな話題に成長していく予感がしました。
毎年開催されている農業WEEKですが、来年も開催されるそうです。
農業関係者の受注・リード獲得ができる展示会|農業WEEK 通称:J-AGRI(ジェイアグリ) (jagri-global.jp)
PROFILE/ 筆者プロフィール
泉 賢一Kenichi Izumi
1971年、札幌市のラーメン屋に産まれる。北大の畜産学科で草から畜産物を生産する反芻動物のロマンに魅了される。現在、農食環境学群循環農学類ルミノロジー研究室教授。2023年より酪農学園フィールド教育研究センター長。専門はルーメンを健康にする飼養管理。癒やしの時間はカミサンとの晩酌。