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ゲノム✕OPUによる牛群改良戦略の2本柱

JOURNAL 2024.10.10

寺内 宏光

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi

 らくちっくラジオの寺内です。

 ここまでゲノムで牛群の遺伝改良を進めるポイントについて解説してきました。

 精液選択が最も重要で、その判断基準として精液選択と牛群のゲノム評価の軸をそろえて改良の方向を決めることが、確実に牛群を変えていきます。

 今回は、OPUを用いて遺伝改良を進めるための2本の戦略について解説します。良い技術が真価を発揮するには、良い戦略が必要です!

◆           牛群ゲノム改良戦略1本目:既存の遺伝子を活かす

 詳しくは7月の記事を参照ください。https://rakuconne.net/journal/590/
 牧場の指標でゲノム検査済の牛をランキングしたものです。

 基本的に、この手順に基づいて遺伝改良を進めます。目安として上位50%の遺伝子を残し、最上位は積極的に増やします。

 下位50%の遺伝子は残さず、中でもとくに低い牛は受胎率も低い場合が多いのでレシピエントにもせず淘汰対象です。50%という数字はあくまで目安なので、実際は数値や牧場の状況で判断します。

 この手順では、ゲノム評価値トップの牛は積極的な受精卵生産を推奨していますが、実際には牛群の最上位でもそれほど数値が高くない場合があります。その場合は、次の戦略へ移行します。

◆           牛群ゲノム改良戦略2本目:ハイゲノムの導入

 最近では、国内でもゲノム改良の進んだ牧場がいくつかあり、かつての数十万円もする輸入受精卵に引けを取らないような国産ハイゲノム受精卵が数万から十数万円で入手できるようになりました。

 このような受精卵を購入して、遺伝能力の高い産子からOPUにて積極的に受精卵生産することで一足飛びに改良を進めることができます。この方法で、数世代でまったく違う牛群へ生まれ変わります。少し寂しい感じもしますが、収益性で考えた場合には最も合理的です。

 次回は、遺伝改良にお金をかけることは本当に良い投資なのか、という疑問について考えてみましょう。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

寺内 宏光

寺内 宏光Hiromitsu Terauchi

北海道にて酪農場勤務と㈱トータルハードマネジメントサービスでの修行を経て、2016年より栃木県にて家業の寺内動物病院を三代目として継承。より広く地域のニーズに応えるため2022年より法人化し、現在は獣医師4人在籍する㈱寺内動物病院の代表

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