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水本牧場ブログ8:初乳給与-IgG

JOURNAL 2024.09.13

強い牛からは良い免疫の初乳が出る

 皆さんは子牛の初乳給与はどう考え、どのような選択をしていますか? 私の農場では、「強い牛から良質な初乳を搾り、子牛に給与する」ことを重要視しています。

 突然ですが、以下の表は自農場での初乳のIgG濃度を調べた検査結果です。シンベッツの大塚獣医師が採血し、検査したものです。
 検査条件としては、
・出生後7日以内に採血したこと
・γグロブリン濃度からの推定IgG濃度であること
 のようです。

 嬉しいことに、うちで検査した牛は、全頭が高い数値=Excellentを示していました。ホル雌だけでなく、ホル雄やF1の雄雌が混ざっています。

 大塚先生曰く、乾乳期から分娩移行期の管理や、子牛のケア、初乳管理の適切さなどがこの結果につながっているのではということでした。

 正直なところ、この検査を依頼されるまで、IgG、Brix値のことがよくわかっていませんでした。しかし、日頃から初乳の糖度や抗体、免疫を気にして強い牛を作るという意志をもって取り組んでいました。それがこのように数値になって表れたのは、とても良かったですし、自信に繋がりました。
 現在は、このときよりさらに良い管理になっているので、数値もより良いものになっているかもしれません。

子牛に良い免疫を移行させることを常に意識

 本来子牛は生まれた後、母牛の初乳を飲み、腸で抗体(免疫グロブリン:IgG)を吸収することで初めて免疫を獲得することができます。

 うちでは、産まれる前の胎子の時期から、良い免疫を獲得できることを意識しています。つまり母牛の管理から免疫を意識するということです。そうすることで、母牛から分娩後に高い抗体値を持った良質な初乳が搾れることを意識しています。

 産まれたときにしっかりと初乳を吸収できる「強い子牛」になっていることが、その後の良い免疫を得ることに必要です。そして、良い抗体を持った初乳を飲ませることで、しっかりと良い免疫を獲得できます。

 産まれるときに子牛そのものが弱ければ、初乳が良くてもしっかりと吸収できず、良い免疫も獲得できません。なので、胎子の時点から子牛作りを意識することが重要です。

 強い子牛を作るために、うちでは初任牛にホルスタインの性選別精液を授精します。若いほうが遺伝率が良いため、改良速度が速まるということも理由です。

 産まれて来る子牛は強いですが、初乳の質に関しては経産牛の方が初産よりも長く農場に在籍していることから、農場で生き抜くための免疫を獲得できる抗体は多く持っていると考えられます。

 ですので後継牛でもあるホル雌には、初産牛の初乳だけでなく、経産牛の冷凍初乳を飲ませています。初乳は経産牛の糖度30以上の初乳は1~1.5Lに小分けにして、フリーザーパックに薄く入れて冷凍庫に保存します。

 経産牛の冷凍初乳は、本当は3産目の初乳がピークで良いと思考えていますが、うちの頭数では3産だけでは足りなくなるので、2産、4産の経産牛の初乳も冷凍します。

 冷凍保存の際は薄くすることによって、凍るのも解かすのも早く、あまり抗体を損なうことがないようにします。

 解かす時は、抗体が壊れてしまわないように熱湯は避けるようにしています。1.5Lなら、違う経産牛2頭分を使用して3Lにして飲ませています。これはより色々な抗体を子牛に取り込むためです。その後、初産の初乳を飲ませています。

 経産牛の初乳は、糖度が25より高ければそのまま給与しますが、25より低い場合は、糖度の高い冷凍初乳を一つ混ぜて飲ませています。

 次回は、初乳の搾乳から給与までを紹介します!

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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