親牛が子牛を舐めることは重要
現在私の農場では自然分娩が90%です。初産であっても親牛が子牛を舐めて綺麗にしてくれています。あまり舐めることが得意な牛でなくても、介助が上手い経産牛を同じ群に入れているので、子牛は綺麗にリッキングされます。
舐めることによって良い微生物が親牛から子牛に移行して、これから農場で生活していくうえで必要な免疫や抗体を獲得することにつながると考えています。子牛にオーラを纏ってもらうイメージで、微生物に覆われることを目指しています。
分娩後はしっかり時間を取って30分から1時間くらいは舐めてもらってから、ハッチに移動します。その際、タオルで脇と股はしっかりと拭きます。裏側まではキレイに舐められていない場合もあるので、ココはしっかりチェックします。夏ならば、そのまま自然乾燥にします。冬は、遠赤外線ヒーターを使って乾燥します。遠赤外線ならば、対象物を温めるので、熱くなれば避けることができるし、温風や空間を温めるヒーターのように乾燥しすぎる心配も少ないです。
消毒しすぎ・乾燥しすぎに注意
臍帯は、外側を乾燥しやすいスプレーをかけておきます。ここで注意ですが、臍帯を処置するときに内側まで消毒・洗浄してしまうと、悪い微生物の侵入や炎症が起きやすくなります。処置は外側だけにして早く乾燥させて、傷口が早く塞がるように心がけています。
もう一つ注意点として、最近、新生子牛を洗うという話を聞きますが、私はなるべく避けたほうが良いと思います。足先や、しっぽだけならば良いですが、体を洗うのはいろいろな影響が起きます。さらに水だと体温調整ができなくなり、内臓機能が低下します。お湯では、毛の汚れだけでなく、皮膚の油分、水分を必要以上に失うことになります。そうすると乾燥しやすくなり、脱水などの影響が出ることがあります。濡らしたあとに長時間温めたりして乾燥しすぎると、より脱水になってしまいます。脱水になると内臓機能が低下するので、この後に初乳給与しても吸収率が悪くなります。脱水が疑われたり、ぐったりしている子牛がいれば、電解質給与がお勧めです。カテーテルを使い、1から1.5Lを与えてみてください。1時間くらい様子を見て再度与えても良いです。この際、1回に多い量をやると、吸収するより尿として出る動きが強くなってしまうので、少量を数回に分けると良いです。
現在私の農場では実践していませんが、実家にいたときはジャージーがいたので、手厚い介助の一環で電解質給与をしていました。体温維持にも役立ち、胃腸に動きを与え、尿や便のチェックもできます。ジャージーのおかげで、10代のうちにいろいろ考えさせられ、鍛えてもらいました。
分娩後の処置は、人側から見た綺麗さや効率を求めることも良いですが、子牛側から見て、その後の哺乳育成とつながる、未来を見据えた処置を考えてみるのも良いと思います!
次回は、初乳給与を紹介します。