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水本牧場ブログ5:私の酪農経営哲学

JOURNAL 2024.07.18

 こんにちは。

 今回は、私が日々試行錯誤しながら酪農と向き合ってきたなかで、「酪農経営をするうえで重要な考え方」についてお話ししていこうと思います。とくに、後継者の皆さんや新規就農をされた皆さんに受け取ってもらえたら嬉しいです。
 私は自身の牧場を経営してからは9年です。まだ日が浅いですが、それ以前に20年以上、実家の農場で酪農に本気で向き合ってきました。そこには自信を持っており、今なおより良くなるように考えチャレンジを繰り返しています。

 そんな私の経営向上の考え方は「円」を意識することです。

円を描くように全体を良くする考え方

 よく、哺乳→育成→搾乳→乾乳と改善を進め、そこで一区切りつくというような話を耳にします。仮に「うちの牧場は、哺育は完璧!」という農場があったとします。しかし、完璧な哺育管理を実現するには、やはりその前の乾乳、さらには搾乳、さらには育成と遡って良くしていかなければなりません。
 そこで、私は常に「円」を意識しています。まずは基本的な哺育・育成・搾乳・乾乳と学び、実践していきます。すべての基本を再確認し習得したら、次に「より良い管理」を実現するにはどんなことを学び、何を改善すべきかと考えられるようになります。
 何かうまくいかなかったら、「この前段階はどうなっていたか」「そもそも昨年はどういう管理していたっけ」「気づけば基本がなっていなかった!」などと自身の管理を振り返りやすくなります。

知識・経験・人脈を大切に

 まずは基本から、全ての場面での管理を満遍なく網羅していきます。しかし初めに基本を学び実践するときは、なかなか思うようにいかず、難しいと感じることもあります。しかし、学び、実践し続けていくと、知識や経験が備わってきます。

 また、さまざまな人と関わり話を重ねると「人脈」が形成されていきます。自分が何かにチャレンジしたいときに力になってくれる方々がいると、段々と改善のスピードや習得が早くなり、やりたいことの実現をしやすくなってくると感じています。そうすると、はじめは小さかった円が気づけば大きな円になり、農場としてのレベルもグンと向上しています。
 やはり重要なのは「何かに特化する」のではなく「全体の繋がりを見ながら満遍なくクリアしていく」ことです。これは酪農経営のみならずさまざまなことにも応用できる考え方だと思っています。参考になれば幸いです!

人との繋がりを意識する

 酪農は、多くの人が関わって成り立つ仕事です。一つ一つの農場がは独立していますが、ほとんどの農場が組合、団体に所属していて、協力している状況です。
 1人や、1農場では、じつは仕事が成り立ちません。ですので、私達酪農家や業界に関わる皆さんが酪農業界を動かす「歯車」だと考えてみると、より「つながり」を意識することができると思います。
 そう考えると、人と円滑につながれていることって、とても良いことですよね。
 ではその歯車を動かす「動力」とは何でしょうか。私は「自身の能力や精神力、行動力」だと考えます。人によって強弱はありますが、関わる人が増え、周囲と接する数が多くなれば、周囲が歯車を動かしてくれます。
 そうして自身の歯車を動かしてもらい、自分の能力や精神力を鍛え、ゆくゆくは自らが大きい歯車を動かして周囲をサポート・先導するようになれれば良いと考えます。

 酪農は関わる人が多いので、しっかり個人個人と対応していき、皆で協力して業界全体を動かして行きたいと思っています。

牛の仕事を考える

 牛の仕事は搾乳でしょうか?搾乳は、人の仕事ですね。では牛は乳を溜めるのが仕事でしょうか?私は乳が溜まるのは、結果だと考えています。

 牛にとっては「水を飲む」、「エサを食べる」、「寝る」のが仕事だと考えます。仕事をした成果が、乳が貯まること、糞尿をするということになります。ですので、牛達にしっかり仕事をしてもらう環境とエサを作るのが、私達酪農家の重要な仕事になります。当たり前のことになりますが、このことをしっかり意識して仕事をすることが大切です。

 糞尿を畑に撒き、良い草を作り、良質な牛乳を搾って経営してるこちら側が、牛達に配慮して、観察、計画をして、牛達に仕事に集中してもらえるようしたいと常々考えています。
 とくに家族経営の場合、酪農が生活の一部になりがちで、仕事だという認識が薄れ、経費が家計費の一部となり、必要経費まで削ることになっているケースを聞くことがあります。
 そうなると、牛達が仕事に集中できる環境・エサの提供が疎かになり、乳量が減り、減収になってしまいます。どこにお金をかけるべきなのかをしっかり見極めなければなりません。

 酪農を仕事として考え、牛達が、より質の高い仕事ができるように配慮して、増収を目指しその収益を牛達に還元し、さらなる増収につながる考えを持てば、人にも牛にとっても良い経営になると考えます。牛舎の環境設定をする場合、極力牛の導線がスムーズになるように考えることもまた、重要です。とくに水槽は後から個数や配置を変えることが難しいので、計画段階で牛達に配慮した設計が求められます。

 当たり前のことではありますが、基本を大切にしていきましょう。
 改めて、考えるきっかけになればと思います!

PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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