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デーリィマネジメントセミナー

JOURNAL 2024.05.22

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

 酪農学園大学デーリィマネジメントシステム研究会は5月17日、酪農学園大学(北海道江別市)で第3回デーリィマネジメントセミナーを開催した。今回は、年々高まる気温に伴い酪農における暑熱対策への注目が高まっていることから、改めて暑熱対策について専門家が解説した。

繋ぎ牛舎のトンネル換気の今昔

 全酪連技術顧問の中田悦男氏は、繋ぎ牛舎のトンネル換気について、自身の現場普及経験からさまざまな事例を解説した。冒頭、暑熱対策の前に換気対策を十分に行なうことが最重要であることを強調した。

 トンネル換気は陰圧による大量の換気と速い空気の流れを利用し、牛の体熱を消散させる換気システム。適切に運用すれば牛舎内温度は外気温よりも3~5℃低くなり、牛の体感はさらに低くなる。

 導入の際の注意点として中田氏は、内部の換気扇の位置を牛に近づけ、牛体に風が当たるような設計にすることや、システム導入の際は机上の計算で割り出した台数よりも多く扇風機を設置する必要があることなどをあげた。

 実際に導入する際は、追加の換気扇を設置できるスペースを確保し、稼働後に理想的な風速に届かない場合には、そこに換気扇を増やす。
 牛舎内(牛のいるエリア)の理想的な風速を4m/秒まで上げることで、換気に加え暑熱対策にも効果があると述べた。また、クモの巣や扇風機のホコリの定期清掃が必須であるとした。

暑熱下で乳脂率を維持する栄誉管理

 カナダ・アルバータ大学の大場真人教授は、暑熱環境下での乳脂率低下を防ぐ方法などを解説した。

 乳脂率が低下するメカニズムは、粗飼料採食量の低下に伴うルーメン発酵の不十分な状態からルーメンpHが低下(ルーメンアシドーシス)すると、濃厚飼料から摂取した不飽和脂肪酸が飽和脂肪酸に正しく分解されずトランス脂肪酸に分解されてしまうことに起因している。乳脂率低下の有効策として大場教授は、ルーメンアシドーシス対策と油脂の適切な利用をあげた。

 アシドーシス対策の重要点はTMRの選び喰い回避で、粗飼料切断長を短めにすることや、加水も有効とした。また、デンプンの代わりに糖を給与することで乳脂率を向上させた事例を紹介。

 油脂の利用についてはその特性を十分に理解したうえで使用するべきと前置きし、不飽和脂肪酸を多く含むオレイン酸やリノール酸は乳脂率を下げるとした(加熱大豆やコーン、DDGsなど)。

 一方で、飽和脂肪酸であるステアリン酸は乳脂率に影響を与えず、パルミチン酸は乳脂率を高めると説明した。
 パルミチン酸を多く含む原料としてパームがあるが、パームそのものには不飽和脂肪酸(乳脂率を低下させる脂肪酸)も含まれているため、原料選定の際にパルミチン酸を多く抽出したサプリメントなどを選択することを推奨した。

 そのほかのアイデアとして大場教授は、TMRの給飼回数によって乳脂率が変わるかどうかの研究を紹介。1日1回給飼よりも1日3回給飼のほうが乳脂率が高まったとした。その際の注意点として、1日3回以上の給飼はかえって効果が低いと加えた。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


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