及川 伸(酪農学園大学 ハードヘルス学教室・教授)
酪農学園大学 ハードヘルス学教室の及川伸教授に“牛体の衛生スコア”についてご解説いただきました。適切な施設や管理方法のもとに牛が過ごせているかをチェックする重要な指標の一つです。
見るべきポイントは3カ所
牛体の衛生スコアで見るべきポイントは3点です。
・乳房スコア
・下肢スコア
・大腿スコア
これらの汚れ具合を目視で確認します。
ほとんど汚れていない(汚れが全体の5%以下)はスコア1で、良い状態です。
汚れが目立つ状態(汚れが全体の30%以上)はスコア3以上で、要改善です。
スコア3・4である牛が、牛群全体の何%いるかが、普段の飼養管理や施設状態を表す指標となります。
乳房スコア
乳房の汚れ具合を評価します。牛の真後ろから目視で確認します。牛床の汚れ具合や、牛ごとの糞の状態などをチェックすることができます。
参考に、左からスコア1、スコア4、スコア4です。
同じフリ―ストールにいても牛によって汚れ具合が違うのは、個体による糞の状態やベッドのサイズが合っている牛とそうでない牛がいるということです。
下肢スコア
牛の飛節より下の部分を重点的にチェックします。
フリ―ストールやフリーバーンの場合は、通路の状態や除糞がなされているかなどを判断することができます。
大腿スコア
牛の胴体部分も判断材料となります。ベッドの除糞の状態や、敷料の状態などを判断することができます。
こんな施設に要注意
ベッドが合っていないと、通路にはみ出て寝てしまったり、ベッドの上に糞が落ちてしまったりなど、牛体が汚れる原因になる可能性が高いです。しかし、牛群すべての牛が同じ大きさというわけではないので、合わない牛については原因を突き止め、こまめな除糞など人が衛生管理を徹底する必要があります。
写真の牛は、牛床が短いため斜めに寝ています。すると糞は隣のベッドとの境目に落ち、ベッドから牛体が汚れてしまいます。
逆に広すぎると、ベッドの真ん中に糞が落ちてしまうため、こまめな除糞作業が必要となります。
牛舎ごとの理想値は?
及川先生は、「牛群全体で、スコア3・4の牛をこのくらいまでの割合に抑えることができれば理想的」という数値指標を作成し、紹介していただきました。
施設により汚れやすさが違うため、飼養形態に応じたベンチマークを参考にしてほしいと及川先生は言います。
さらに詳しく知りたい方や、具体的な改善方法など質問がある方は、ぜひ質問フォームからお問い合わせください。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。