牛伝染性リンパ腫(EBL)は、牛伝染性リンパ腫ウイルス(BLV)の感染によって引き起こされる慢性疾患です。BLVに感染しても、すべての牛が発症するわけではありません。そのため、「陽性牛が見つかったら、すぐに淘汰しなければならないのか」と不安に感じる生産者の方もいるのではないでしょうか。
今回は、牛伝染性リンパ腫とBLVの基本から、PVL検査を活用した対策まで紹介します。
『寄稿PVL検査「Dairy Japan 2026年9月号」』執筆:鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センターより内容を要約。
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牛伝染性リンパ腫(EBL)・BLVとは?
牛伝染性リンパ腫(EBL)は、BLVの感染によって起こる慢性疾患です。
BLVに一度感染すると、ウイルスは生涯にわたって牛の体内に潜伏します。ただし、感染牛のすべてがEBLを発症するわけではなく、発症するのは感染牛の約5%とされています。
一方で、BLV感染は発症だけが問題ではありません。若齢牛での発症例に加え、繁殖成績の低下や乳量減少、初産月齢の遅延など生産性への影響も確認されています。そのため、EBLを「発症しなければ問題ない病気」と考えるのではなく、農場経営に継続的な影響を及ぼすリスクとして捉えることが大切です。
BLV感染牛はすべて淘汰する必要がある?
BLVの陽性だからといって、すべての感染牛を一律に淘汰する必要はありません。従来の抗体検査では、BLVに感染しているか確認できますが、その牛がどの程度ほかの牛へ感染を広げる可能性があるのかまでは判断できません。
「検査で陽性になったら淘汰しなければならない」と考え、検査そのものをためらってしまうケースもあります。そこで注目したいのが、「プロウイルス量(PVL)」です。
BLV対策で重要な「プロウイルス量(PVL)」とは?
プロウイルス量(PVL)は、血液中に存在するBLVのウイルス量を示す数値です。
BLVは感染後、ウイルス遺伝子が牛の細胞のゲノムに組み込まれ、プロウイルスとして体内に存在し続けます。
近年の研究では、PVLが高い牛ほど、ほかの牛への感染源となるリスクが高く、反対にPVLが低い牛からの感染リスクは低いことが知られています。PVL検査ではPCR法を使って血液中のBLV感染リンパ球数を測定します。
つまり、BLVに感染しているかだけではなく、感染を広げるリスクがどの程度あるのかを判断する材料として活用できるのです。PVLは感染状況を調べるだけの数値ではなく、農場における生産管理指標のひとつとして考えることができます。
PVL検査を活用した具体的なBLV対策

PVL検査の大きなメリットは、BLV感染牛の選択的管理ができることです。
すべての陽性牛を同じように扱うのではなく、感染拡大リスクが高い高PVL牛を把握し、優先的に対策します。
具体的には、次のような方法が考えられます。
・高PVL牛を優先的に出荷する
・高PVL牛を分離して飼養する
・高PVL牛を後継牛として利用しない
・分娩房の利用を制限する
・搾乳を「陰性牛→低PVL牛→高PVL牛」の順番にする
・陰性牛由来の凍結初乳や代用初乳を活用する
初回は全頭検査が望ましいものの、その後は陽性牛に絞って定期的に検査する方法もあります。農場の状況によっては、一部の牛から検査を始め、段階的に取り組むことも可能です。実際に黒毛和種農場でPVLに基づく管理を導入した事例では、5年間で感染率が80%から40%へ半減したとの報告もあります。
農場でできるBLV感染拡大対策
BLVは、母牛から子牛への垂直感染だけでなく、牛群内での水平感染によっても広がります。水平感染では、吸血昆虫のほか、注射針や手袋の使い回し、除角・去勢時の器具などを通じた血液接触が感染につながります。そのため、日々の作業を見直すことも重要なBLV対策です。
例えば、以下の基本的な対策があります。
・注射針を「1頭1針」にする
・使用する手袋を牛ごとに交換する
・使用する器具を確実に消毒する
大きな設備投資をしなくても始められるため、まずは日常の作業から感染リスクを減らしていきましょう。
BLV対策は中長期的に取り組むことが重要
BLV対策では、短期間で完全清浄化を目指すのではなく、「感染拡大を抑えること」と「高リスク牛を適切に管理すること」を積み重ねることがポイントです。農場によって、飼養頭数や牛舎の構造、労働力、牛の更新計画などは異なります。そのため、すべての農場に同じ対策が適しているわけではありません。
必要に応じて獣医師や関係機関と相談しながら、PVL検査の結果と農場の状況を踏まえ、継続できる方法を考えましょう。現在の牛舎では陽性牛の分離が難しい場合には、将来的な牛舎の改築なども含め、中長期的な計画を立てることも選択肢になります。
まとめ
牛伝染性リンパ腫の原因となるBLVは、一度感染すると牛の体内に生涯にわたって潜伏します。しかし、BLV陽性牛をすべて一律に淘汰するのではなく、PVL検査によって感染拡大リスクを把握し、高PVL牛を中心に管理する方法があります。
まずは農場の感染状況を把握し、「1頭1針」や手袋の交換、器具の消毒といった日常的な対策と組み合わせながら、無理なく継続できるBLV対策を進めていくことが重要です。農場ごとの状況に合わせて、中長期的な視点で感染拡大の抑制を目指していきましょう。
▼詳しい実践方法は『Dairy Japan2026年9月号』に掲載しています。
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