Dairy Japan抜粋記事

【現場技術シリーズ】牛が喜ぶ「分娩」とは?

JOURNAL 2026.01.05

Dairy Japan編集部

Dairy Japan編集部Dairy Japan Editorial Department

 分娩は酪農現場で日常的に起こる出来事ですが、牛にとっては強いストレスと痛みを伴う重要な局面です。分娩前後の管理が適切でない場合、乾物摂取量(DMI)の低下や難産、周産期疾病の発生につながる恐れがあります。とくに乾乳期は、その後の乳生産や繁殖成績を左右する重要な期間です。今回は、訪問農場の事例をもとに、乾乳牛のストレスを抑え、分娩をスムーズに迎えるための管理ポイントをわかりやすく解説します。

『Dairy Japan 2025年12月号』現場技術シリーズ「作業ごとのハズせない管理のポイント」より。著者:大久保 宏平(株式会社ノースベッツ・獣医師)
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分娩時のストレスが乾乳牛に与える影響とは

 分娩は日常的に観察される出来事ですが、牛にとっては強い痛みとストレスを伴う重大なイベントです。分娩そのものに加え、環境や管理によるストレスが重なると、乾物摂取量(DMI)の低下を招き、難産や周産期疾病のリスクが高まります。

 DMIの低下は、分娩後の乳量減少や回復遅延にもつながるため、分娩前後の管理は非常に重要です。ストレス要因には、気温・湿度、換気状態、水質、寝床環境、飼槽スペース、群構成の変化など多くの要素があります。これらは農場ごとに異なるため、自農場におけるストレス要因を一つずつ洗い出し、乾乳牛ができるだけ安定した環境で分娩を迎えられるよう整えることが、分娩と乳生産成功の鍵となります。

乾乳期のストレスを可視化するNEFAモニタリングの考え方

乾乳期のストレスを可視化するNEFAモニタリングの考え方

 訪問農場の事例では、乾乳牛のエネルギー状態を把握するためにNEFA(非エステル化脂肪酸)のモニタリングを行なっています。NEFAは「エネルギー摂取が不足した際に、体脂肪が分解されて上昇する指標」で、DMI低下のサインとして活用できます。

 NEFA値が高い牛は、第四胃変位や胎盤停滞、乳量低下のリスクが高まると報告されています。分娩予定日14日以内の牛を対象に定期測定することで、ハイリスク牛を早期に把握し、個体対応や飼料設計の見直しに役立てることが可能です。また、データを継続的に確認することで、牛群全体がストレス下にあるかどうかを把握でき、暑熱期など季節要因への対策強化にもつながります。

分娩ペンへの移動タイミングと過密が招くリスク

 乾乳牛へのストレスは一つとは限らず、複数の要因が重なる点に注意が必要です。

 暑熱に加え、分娩ペンへの移動タイミングや収容率の高さが課題となっていました。分娩ペンへの移動が早すぎると滞在日数が長くなり、群構成の変化や過密、ベッドの衛生悪化、飼槽スペース不足といった問題が生じます。

分娩ペンへの移動タイミングと過密が招くリスク

 研究では、分娩予定日前2〜7日の移動はDMI低下を引き起こす可能性が指摘されており、慎重な判断が求められます。分娩頭数が多い時期ほど過密になりやすいため、施設面積を考慮し、可能な限り過密を避ける運用が重要です。

分娩ペンへの移動タイミングと過密が招くリスク

分娩管理の基本は分娩予定日の正確な把握から

分娩管理の基本は分娩予定日の正確な把握から

 分娩管理の基本は、正確な分娩予定日を把握することです。

 一般的にホルスタイン種の在胎日数は278〜279日とされていますが、産次や品種、受胎内容によって差があります。交雑種や和牛では在胎日数が長くなる傾向があり、双胎では短くなるケースも見られます。これらを把握せず一律に管理すると、分娩ペンへの移動時期がずれ、無駄なストレスを与える原因になります。

 自農場の繁殖データを整理し、妊娠日数の傾向を理解したうえで分娩徴候を観察することで、移動の精度が高まり、乾乳牛の負担軽減につながります。

まとめ

 分娩とその後の乳生産を成功させるためには、乾乳牛が受けるストレスを最小限に抑えることが重要です。NEFAなどの指標を活用し、エネルギー状態を把握するとともに、分娩牛の移動タイミングや収容率、環境条件を見直すことが求められます。

 分娩予定日を正確に把握し、基本的な管理を丁寧に積み重ねることで、牛にとってより快適な分娩環境を整えられます。今一度、自農場の分娩管理を点検してみましょう。

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