
哺育期に関するブログを書き始めて9回目に突入しました。再度になりますが、「三つ子の魂、百まで」ということわざは、「幼い頃の性格や気質は、大人になっても変わらない」という意味を持ちます。 つまり、幼い頃に身につけたものは、一生残るということです。
このことわざは、生まれ持った性質の強さ、幼い頃の教育、経験の重要性を強調しています。
それを牛に例えて、「3カ月までの管理、10歳まで」としています。
離乳から3カ月

うちの経営的に、重要な管理期間は離乳後から3カ月までです。前回の続きで今回は、ハッチでの個別管理から離乳後の移動のお話です。就農当初は育成舎の群管理へ移動していましたが、より良い牛群作りを目指し、繋ぎの搾乳牛舎での管理を選択しました。この選択にはいろいろな理由があります。
① 通路、処理室を清潔に保つ
うちの搾乳牛舎の構造上の問題として、処理室の前まで繋ぎの牛床が続いているうえに、頭合わせの繋ぎ牛舎であることがあります。糞尿で処理室周りが汚れる恐れがあるので、衛生面を考慮して就農当初は空けていました。
そこで、空けている牛床の活用法として、子牛を繋ぐことを試してみたことがきっかけで、搾乳牛舎での離乳後管理が始まりました。
② ストレスに対応出来る子牛達を作る
処理室の前で飼育しているので、私達夫婦が頻繁に作業をしたり、移動をしたり、いろいろな人達も通ったり、話したりします。人に対するストレスを早いうちから体感し、馴れさせることで、ストレスに対応できる子牛達を作ることができると考えています。
ストレスを与えないようにすると聞くことがありますが、個人的にはストレスがかからない環境は無いと思っているので、それならばストレスに対応できる子牛達を作ることが、経営上の利益になると考えています。
③ 搾乳牛舎を体感して記憶する
農当初は、初妊牛を搾乳牛舎で飼育し、分娩してもらう管理方法を数頭しましたが、この方法は負荷が大きいと思ってやめました。そこで子牛を繋いで飼育し、環境を記憶してもらうことにしました。
搾乳、バンクリーナーの動作や音、私達夫婦の作業を体感してもらい、記憶することを願い始めましたが、結果的に良かったと思っています。この管理方法を実践してから、初妊牛が分娩後に搾乳牛舎に移動して来ても異常行動をすることはありませんでした。
④ 「水を飲む、エサを食べる、寝る」を習得する
そして最後は、最重要課題である「早期に良い習慣を身に付けること」です。うちでは、牛達の群れとしての習性を利用して、周囲の牛達の行動に同調し、シンクロ(同期化)することで、子牛達に良い習慣を身に付けてもらうようにしています。
搾乳牛達と同じタイミングでエサを給与することで、「食べる、水を飲む、寝る」の行動を同調でき、子牛達は行動がシンクロしていきます。とくに草の喰い込みが良くなるので、余計に水を飲み、反芻がしっかりできるようになります。
そして、うちの搾乳牛達はよく寝るので、子牛達もしっかり寝ることができるようになります。
ペア飼いや、群飼いの良いところもありつつ、繋ぎで個別になってるので、ほかの牛達との優劣を気にせず、子牛達のペースで良い習慣を身に付けることが出来ます。
子牛自ら学んでもらう
子牛達には私達が「しつける」というよりも、場を提供して自ら良い行動を「習得」してもらうようにしています。しかし、子牛自らが習得するには、離乳までに「元気で強い子牛」であることが必須です。乾乳、分娩、初乳、哺乳、哺育とつないでいくことで、やっと「元気で強い子牛」ができます。ここまで来て、やっと良い習慣を身に付けることができる子牛になり、またここからが育成管理の始まりとなります。
離乳~3カ月までに、早期での胃腸作りと、良い習慣を身に付けることで、3~6カ月、6カ月~授精期、授精期~受胎、そして初妊~分娩と計画通りにスムーズ進むはずです。3カ月以降も気を抜かない管理が必要ですが、管理が楽になると思います。
経営の戦略として、子牛にかかるお金を「経費」ではなく「投資」にできるか、成長計画を「停滞」ではなく、「円滑」にできるかに重要な期間が、生後3カ月までとなると思います。
今回で、「3カ月までの管理、10歳まで」は終了となります。今後は、3カ月以降の管理や、うちでのいろいろな取り組みを紹介したいと思います。