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「子牛セミナー」を開催しました!②

JOURNAL 2025.08.12

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

皆様、暑いなか、お仕事お疲れさまです。あかばね動物クリニックの宮島です。

 子牛のセミナーは、子牛は生まれてからの管理も大事ですが、母牛の管理も大事ですよ、というお話からスタートしました。子牛は母牛のお腹の中で徐々に大きくなりますが、図1を見ると、後半に一気に大きくなることがわかります。この一気に大きくなる時期は概ね乾乳期と重なります。
 この時期に、バランスの悪いエサ、乾物摂取量が落ちるような乾草、過密やヒートストレスなどのストレスを与えることは、子牛の良好な成長を妨げることが、この図からは想像できます。
 以前、研修した動物病院で獣医さんが「乾乳を密飼いにすることは毒を与えることと同じだ!」とおっしゃっていました。分娩した母牛への影響を考えての言葉とは思いますが、過密の環境下では子牛も元気には生まれなさそうですよね(とは言うものの、暑い地域は分娩が偏るので四苦八苦しております)。

 図2は、妊娠末期に栄養が十分に与えられていた母牛と、そうではない母牛から生まれてきた子牛の免疫細胞の数を示したものです。子牛の免疫のために働く細胞(T細胞)の数が違うことがわかります。母牛の栄養充足は、子牛の免疫のためにとても大事です。
 誤解して絶対にやってはいけないのは、この記事を見て「この母牛は痩せているから、栄養をたっぷり与えよう」と思って、明日から乾乳牛にエサ(配合)を多く与えることです。
 乾乳期間はエネルギーや蛋白などを上手に充足させないといけません。子牛の調子がおかしいのは、母牛の影響かな? と思ったら、農場に係わっている獣医師やコンサルの方に相談してみてくださいね。

 図3は、最近さまざまなセミナーで目にすることが多い、暑熱ストレスの影響についてです。この図は、THI78の状態で、暑熱対策(スプリンクラーとファン)の有無で、生まれてくる子牛の体重、IgG吸収効率の違いを示しています。

 暑熱ストレスは、子牛の体重、抗体(IgG)の吸収効率に悪い影響を及ぼしています。暑さの影響で分娩が偏り、過密のストレス、暑熱ストレスが強くかかる渥美半島では、10月に生まれてくる子牛のサイズは小さくなります。

 また、乾乳期の暑熱ストレスは、子牛の生産性、さらには孫牛の生産性に悪影響を及ぼすことがわかってきています。「暑熱の呪いは孫まで」です。乾乳牛もしっかりと冷やしてあげましょう。

PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。

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