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泉先生のルミノブログ22:アミノ酸バランスについて

JOURNAL 2025.08.04

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

 北海道在住時代に、友人・知人に新年度から神奈川県に移住することをお伝えすると、十中八九はこう返ってきました。曰く、「夏は暑いからね~」と。確かにこちらの夏は暑いですが、脅し文句に相当の覚悟ができていましたので、予想どおりの範囲です。ところが、こちらの方に言わせますと、今年の6月の暑さは異常だったそうですね。メディアも暑すぎだと、連日報道していました。今年しか知らない自分にとっては、本州の暑さはこのようなものだと想定範囲内でしたが、実は異常と言ってもよいほどの暑さだったようです。経験値がなく、比較するものがないのは面白いものだと感じています。

さて、先日、アミノ酸バランスに関する酪農セミナーを受講してきました(ワイピーテック社・Adisseo社主催)。メチオニンとリジンの給与については、従来からスタンダードになっていたことですが、メチオニンの最低給与量を代謝エネルギー(ME)当たり1.19gとして、リジンの給与量はメチオニンの給与量に対して2.7倍になっていなければいけないことが強調されていました。

精密な飼料設計を行なううえでは、配合飼料中のアミノ酸組成も把握しておきたい。

例えば、高泌乳牛で1日71McalのME(代謝エネルギー)を摂取する牛がいたとします。この牛には、メチオニンを71Mcal×1.19g=84.5g給与しなければいけません。リジンは84.5×2.7=228.1g/日の給与量が目標となります。

 コストがかさみますので、この量を給与できるかどうかは別の話になりますが、仮に、これだけのアミノ酸を給与できれば、高確率で乳生産や飼料効率が上向くとのことでした。

また、講演の中で、私のほうから講師に質問をさせていただきました。

リジンが充足している状況でメチオニンを強化してやると、デノボ脂肪酸の合成が増すことのメカニズムを知りました。

以前からメチオニンが乳タンパク質率や乳脂率を改善することは知っていましたが、そのメカニズムについて深く理解できていませんでした。
 少々難しいのですが、メチオニンがエムトール(mTOR)という細胞の成長や代謝を制御する酵素を活性化して、デノボ脂肪酸の合成を促進するそうです。単純にメチオニン添加によって栄養状態が改善されて乳成分が改善されるのではなく、メチオニンが直接デノボ脂肪酸の合成経路に働きかけているのです。

メチオニンやリジン以外に、ヒスチジンもデノボ脂肪酸合成に間接的に関与しているとのことでした。分子生物学が苦手な自分ですが、セミナーではアミノ酸の興味深いメカニズムを学ぶことができました。

【追伸】

 大学農場の技師さんから、「先生、らくコネ読みました!」とのうれしいお言葉をちょうだいしました。

 さらに、神奈川銘菓についての情報もいただきました。クルミの入ったおいしいお菓子があるそうですが、「売り切れ御免」というほどの人気なのだとか。北海道に帰省するときに買って帰りたいです。

 ありがとうございました!

PROFILE/ 筆者プロフィール

泉 賢一

泉 賢一Kenichi Izumi

1971年、札幌市のラーメン屋に産まれる。1浪の末、北大に入学。畜産学科で草から畜産物を生産する反芻動物のロマンに魅了される。修士修了後、十勝の酪農家で1年間実習し、酪農学園大学附属農場助手として採用される。ルミノロジー研究室の指導教員として学生教育と研究に取り組むかたわらで、酪農大牛群の栄養管理に携わる。2025年4月、27年間努めた酪農大を退職し、日本大学生物資源科学部に転職する。現在はアグリサイエンス学科畜産学研究室の教授。専門はルーメンを健康にする飼養管理。最近ハマっていることは料理と美しい弁当を作ること。

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