
「いい土とは何か?」という話をvol.5、6と続けて書いてきました。腐植やCECについての知識も得て、堆肥の重要性にも触れることができたと思います。
では、皆さんは土壌分析を見るとき、どの項目から目を通しますか?
土壌分析の目的が「肥料の量はどうしよう?」だけではもったいない! 今回は、分析項目を見る優先順位を提案します。自分の畑の性格と、どう手を加えるべきかを一緒に考えていきましょう。
何よりpH!
土壌分析で一番最初に出てくる項目、それがpHです。理由は言わずもがな、最重要だからです。
皆さんも「pHは大事」と感じていると思いますが、「なぜ大事?」と聞かれると、うまく説明できる人は少ないのではないでしょうか。この機会に、pHの基本構造を理解しましょう!
畑の性格と、どう手をかけていくかが見えてくるはずです。
呪いの酸性土壌と、CECの優先順位
まずは、CEC(vol.5参照)における陽イオンの優先順位を見てみましょう。
Al³⁺ > H⁺ > Ca²⁺ ≒ Mg²⁺ > K⁺ ≒ NH₄⁺ > Na⁺
(ここで読むのをやめようとした人、あと少しだけお付き合いを…)
覚えてほしいのはたった3つ!
- 一番強いのは Al(アルミニウム)→酸性
- 次に H(水素)→酸性
- 3番手に Ca(カルシウム)→アルカリ性
これだけ抑えて読み進めてください!

CECってなんだっけ?
CECの正式名称は「陽イオン交換容量」といい、以下のような特徴があります。
- CECが多いと、肥料成分(陽イオン)をたくさん保持できる
- 1つの「部屋」に対して、1つの陽イオンしか入らない(電荷の大きさに比例)
- イオンは水に溶けることで出入りする
ここまではOKでしょうか?
なぜ酸性になりやすいのか?
ここで大事なのは、CECに「何が入っているか」が酸性に影響するということです。つまり、アルミニウム(Al³⁺)や水素(H⁺)が多くを占めている土は、酸性になりやすいのです。
具体的に言うと、CECの中で優先順位の高いAl³⁺は、強力に「その部屋」を占拠します。そして水に溶けると、こんな反応を起こします
Al³⁺ + 3H₂O→ Al(OH)₃ + 3H⁺
つまり、水の中に水素イオン(H⁺)を三つ放出するということです。
酸性とは「水素イオンの数が多い状態」なので、これが酸性の原因になります。さらに厄介なことに、アルミニウム自体は土が酸性の時、よく溶け出す性質があり、
→ 酸性になる → アルミニウムが溶ける → さらに酸性に…という負のループが起きるのです。
-迂回部門-育成牛飼養管理:哺育・育成管理技術(乳牛改良目標・飼料・繁殖)-自給飼料生産-.png)
実際、北海道の黒ボク土はCECが高く、アルミニウムを多く含むため、
この「酸性スパイラル」に陥りやすい性質を持っています。
では、どうすればこのループから抜け出せるのでしょうか?
ここで登場するのがカルシウム(Ca²⁺)です。
酸性土壌にはカルシウムの意味
JAでカルシウムが配布される地域もありますよね。
カルシウムはCECの優先順位3番手。Al³⁺やH⁺と競える初めてのアルカリ性です。やっと酸性土壌からの脱却が狙える。そんな貴重な成分なのです
じゃあ、どれだけ入れたらいい? と思いますよね。
苦土石灰で30〜60kg/反といわれていますが、地質によって異なります。入れるカルシウムによっても変わってしまいます……
ちなみにカルシウムは粉状であっても石として散布することが多いですよね。水に溶けるには溶かす成分が必要です。キレート、土壌菌などで吸収率アップが狙えます。
自分の畑に入れる具体的な数字が知りたい方は、soilでカルシウム計算用のシートを作ってあるので連絡してください。無料で差し上げます!
土壌の第一優先、酸性土壌に立ち向かいましょう!
PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一Imamura Taichi
標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。
経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。