
皆様、お仕事お疲れさまです。あかばね動物クリニックの宮島です。少しだけ仕事が忙しかったり、体調を崩したりで、投稿間隔が空いてしまいました。皆さんも、これからの夏の暑さにはくれぐれもお気をつけください。さて、搾乳手技についての続きを書きます。
ミルカーの離脱タイミングについて
体細胞数の上昇原因を上手に把握できない農家さんにおいて、全頭乳汁サンプリングを実施することがあります。検定に加入していない場合、体細胞数を上げている牛を見つけるのは一苦労です。体細胞数を上げている個体を見つけ出し、さらに分房も突き止めて、別搾りにするだけで、とりあえず体細胞数がぐんと下がります。
その際、搾乳後の後搾り乳を採取するのですが、ミルカーをかけられすぎて紫や赤色に変色した乳頭を見ることがあります(写真)。乳汁を採取しようとしても一滴も出てきません。血の一滴まで搾り取っているような搾乳です。
ミルカー離脱のタイミング設定が遅すぎる、というケースも見られます。その際には業者の方にお願いをして、離脱タイミングを少し早くしてもらうと良いでしょう(タイミングはミルカーや搾乳回数ごとに違いますので、注意が必要です)。
しかし、乳頭が紫色に変色してしまうほどの過搾乳の原因として多いのは、搾乳者が搾乳に何らかの思いがあり、自動搾乳からマニュアル搾乳に切り換えたものの、その個体をよく見ずに、いつまでもミルカーが装着しっぱなしなどの人為的な要因が多いような気がします(図1)。
搾乳スピードがその分房だけ遅いなど、乳房の癖は実にさまざまだと思います。その一本一本を工夫して搾りたいという思いで、オートからマニュアル搾乳に切り換えられるのですが、ほかの仕事に追われ、結局、ほんの少ししかミルク出ていないのに、長いことミルカーがかけっぱなしになっている事例は意外と多いのではないのでしょうか。
結果、乳頭口に不必要に長時間真空がかかりすぎ、乳頭口が開いてきます。そのような開いた乳頭では汚れが付着しやすく、また汚れが取れにくくなり、乳房炎を誘発しやすくなります。
自分は、まだ搾乳という仕事のほんの一部しか理解していませんが、搾乳は酪農家さんの腕と知識の見せ所だと思います。搾乳は科学と牛の生理の基づく極めてレベルの高い仕事だと思います。

図1ミルカーの離脱が遅い際のラクトコーダー模式図。段々と乳頭が花開く

図2 理想的な搾乳時のラクトコーダーイメージ図。このような波形を目指しましょう

写真 乳頭が搾られすぎて変色し型も強く残っている
PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。