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搾乳手技について考える③

JOURNAL 2025.05.09

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

 自分が訪問している農場で、乳質に関する賞をたびたび受賞される農場があります。体細胞数はほぼ一桁です。畜主が「体細胞数が上がってしまいました」と残念そうに言うので、「かなり上がったかな?」と思っていたら、「二桁になりました」という感じです。フリーストール飼養で2回搾乳、約100頭搾乳しており個体乳量は40kgほどです。

 そこでは、まず丁寧な前搾り(ジュージュー乳が出ます)を行ないます。次に殺菌剤入りのお湯の中に入れておいたアンテロープという布(写真1)をよく絞ってから乳頭や乳房を綺麗にします。

 その後、モークロス(写真2)という搾乳専用のウエットティッシュでさらに拭き取ります。汚れだけでなく乳頭についた水分が、アルコールが染みたクロスを使うことにより飛んでいきます。畜主いわく、「モークロスで水分を飛ばし、最初の拭き残しがないかを確認している」とのことです。

 しっかり拭き取りをしているので、コスト面も考慮しプレディッピングはしていません。丁寧な拭き取りの結果、前搾りからミルカー装着までは約2分かかります。早すぎる装着はせずに、しっかり汚れと水分を落とした後、前搾りから90秒以上での装着です(その農場に適した方法はさまざまあるので、プレディッピングをしなくて良いというわけではないので誤解ないようお願いします)。

 一連の仕事に酪農家としての誇りを感じます。「搾乳はチームワークです。良い成績を取ったときは研修生と一緒に食事に行って喜びを分かち合います」「搾乳は必ず日本人と研修生でやります。日本人がこだわりをもって仕事をすると、自ずとそれは研修生にも伝わります」とのことです。そのお言葉に大変感銘を受けました。

 搾乳という高尚なお仕事と比べるのは大変失礼ですが、たまに考えることがあります。自分がトイレで用を足したときに、その紙で自分は拭けるのか? です。安い紙は硬いです。そんな紙では上手に拭き取ることはおろか、自分に傷がつきそうです。

 それはきちんと水分を拭き取ってくれるのか? でもです。自分は水分をきちんと拭き取りたいです。湿りっぱなしは病気になりそうです。

 例えが汚くてごめんなさい。しかし、牛を飼うなかで、どの場面でも「それを自分がやられたらどうなのか? 」という想像力を働かせながらお仕事をされると、結果は大きく変わると信じています。

写真1、アンテロープ。このタオルの模様が上手に拭き取れるカギとなっている。普通のタオルより丈夫とのことです。

写真2、モークロス。これも少しずつ改良が加えられている(?)からか、より使いやすくなっているとのことです。

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PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。

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