
前回vol.2では、「植物が一番ほしいのは糖だ」という話をしました。
今回はその続き。「じゃあ、どうやって糖を増やすの?」「窒素を入れるのは良いことだけじゃないの?」という疑問に答えていきます。
まず糖を「増やす」には、光合成を最大化することがポイントです。光合成には「光・二酸化炭素・水」が必要。その中でも光を受け取る「葉緑素」には、とくに「マグネシウム(苦土)」が欠かせません。有機農業でよく聞くBLOF理論では、マグネシウムのほかに鉄、亜鉛、銅、マンガンといった微量要素も重要だとされています。
※BLOF理論(Bio Logical Farming)は、土壌中の微生物とミネラルの働きを最大限に活かし、作物の生理に基づいて栽培管理を行なう有機農業理論です。
収量と品質の向上を両立させるため、土作り・肥料設計・栽培技術を科学的に組み合わせるのが特徴です。
これらは「光を受け取るアンテナ」である葉緑素の合成を増やしてくれます。つまり、光合成の受信感度を高めることで、糖がどんどん作られるわけです。
では「糖を減らさない」ためにはどうするか。ここで出てくるのが窒素です。
窒素は植物の成長を促すとても重要な栄養素。アンモニア合成という大発明によって、世界の食糧危機を救ってきた歴史があります。
でも、植物が窒素を吸ってアミノ酸や蛋白質を作るときには、大量の糖が消費されるのです。つまり、早く育つけど糖が足りなくなる。
その結果、病害虫への抵抗力が落ちたり、苦味が出て、結果的に“弱く育つ”リスクもあるのです。
さらに、窒素を与えすぎると、窒素固定菌が働かなくなるという問題もあります。植物の根に共生する根粒菌は、窒素を空気中から根に固定してくれる存在です。ところが外から窒素が入ると、「じゃあ働かなくてもいいや」と、菌達はサボり始めます。
つまり、窒素を入れすぎると、土が自立しなくなるのです。僕はよく、畑で牧草をちぎって食べてみます。窒素肥料を多く入れた草は、エグみがあって苦く、口に残ります。一方で、自然のままの草は、噛んでいても甘く、野菜のような味がします。これが、糖が足りているかどうかの差なんですね。
もう一つ、糖を減らさないうえで大切なのが菌との共生です。
植物は、根から菌に糖を与え、その代わりにミネラルや酵素をもらっています。
菌が元気にいることで、植物も「もっと糖を作らなきゃ」と光合成を活性化させます。つまり、菌は植物にやる気を出させるパートナーなんです。
まとめると、
- 糖を増やすには、光合成の環境を整えること。
- 糖を守るには、窒素を入れすぎないこと。
- 土壌菌や固定菌とのバランスも大切にすること。
窒素も糖も、菌も、敵ではなく、どう関わるかがカギなんですね。
この記事が面白かったらシェアしてください!
↓ ↓ ↓
PROFILE/ 筆者プロフィール

今村 太一Imamura Taichi
標茶町を拠点に、土壌改良資材の販売や周辺酪農家さんのサポートをする「soil」の代表。飼料会社に13年勤めた後、ドライフラワーやマツエク、ネイルのお店を経営。弟と一緒にsoilを立ち上げ、今は土や牛、人とのつながりを大事にしながら活動中。
経営やコーチング、微生物の話が好きです。「目の前の人に丁寧に」が大切にしている想いです。