
Dairy Japan2025年1月号では、各農場の今年の計画や目標を取材しました。生産現場を取り巻く情勢が目まぐるしく変わるなか、生産者の皆さんはどこに投資し、何を優先して経営のかじ取りをするのでしょうか?北海道別海町で取材をした(株)まろにえふぁーむの取り組みを紹介します。
夫婦それぞれの経験を持ち寄り経営に取り組む
(株)まろにえふぁーむを経営する田辺雅人さん・野奈さん夫婦は、野奈さんの両親の牧場を継承し、経産牛200頭を管理しています。非農家で合った雅人さんは、飼料会社や別の牧場での勤務経験を経て、野奈さんは海外の牧場で経験を積み、それぞれの経験を持ち寄り経営しています。
取材時のまろにえふぁーむデータはM1万700kg、F4.82%、平均体細胞数3.9万、妊娠率30%でした。
積極淘汰・牛群改良
お二人が就農したタイミングでフリ―ストールを新設し稼働しましたが、同時に子育てが忙しくなり、仕事も生活も手いっぱいに。以下に効率よく成果をあげられるかを重視した田辺さん夫婦は、フリ―ストールが満床になる前から積極的な淘汰と改良を進めました。具体的には、搾乳性の悪い牛や周産期病のリスクが高い牛を積極的に淘汰しました。結果、80頭の搾乳に2時間かかっていたのが、今では150頭を2時間半で搾れるまでになりました。

繁殖成績改善と和牛ET
同社の繁殖管理は、(株)トータルハードマネージメントサービスの奥啓輔獣医師とともに改善を重ねてきました。受精卵移植を中心とした繁殖管理を目指して試行錯誤してきました。現在はダブルオブシングを中心に分娩後100日を目途に受精卵移植を行なっています。妊娠率は30%を超え、年間100頭以上の和牛を生産しています。
また同時に、野奈さんのお母さんが中心となって哺育管理を行ない、こちらも獣医師と連携して改善を重ねました。Pirica Geneticsで調達している和牛受精卵との相乗効果もあり、市場で高い評価を受けています。

堆肥舎を使って粗飼料品質向上を目指す

同社の経営を支える大きな要因の一つが、良質な粗飼料です。120haの牧草地はオーチャードグラス主体で、年に3回刈り取ります。TDN65を超えることを目安として収穫しています。今年から堆肥舎を新設・稼働させ、良質堆肥を製造しながら畑の地力向上を目指しています。寒冷地でどのように良質堆肥を目指すのか、今後気になるところです。

牧場の作業効率を高める
さまざまな取り組みの結果、一定の管理レベルを見出した田辺さん夫妻ですが、現在3人の子育てがますます忙しくなることを懸念しています。また、現在のクオリティを保つには、どうしても2人の観察力が欠かせません。「最高品質の生乳を生産する」をモットーに掲げる2人の課題は「高レベルの従業員確保」と「作業性の向上」。信頼できる技術レベルを持った従業員を確保することには頭を悩ませながらも取り組みを検討中。
また、既存牛舎を用いて作業効率を高めるために、現在4dBarnにコンサルティングを依頼し、牛舎のリノベーションを計画しています。
さまざまな経費が高騰するなかでも、本当に必要な投資を見極め、次なる成長に向けて準備を進めていました。

田辺さんは、らくコネ「みんなのブログ」でも農場の様子や日々の取り組みを紹介してくださっています。そちらもぜひ、見てみてください!
PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。