酪農技術情報

最良の子牛哺乳環境を考えたい

JOURNAL 2024.01.23

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

『Dairy Japan2023年2月号』p.34「ルポ1」より

冬場の子牛管理はどこの地域でも悩みのタネになっているのではないでしょうか? 『Dairy Japan2023年2月号』特集テーマは「冬季に子牛を元気に!」です。寒さから子牛を守りながら、牛舎内の換気も欠かさないことが重要ということで、取材に応じてくださったのはオホーツク管内大空町に位置する㈲コバヤシの小林大輔さん。

なぜ子牛は寒さに弱い?

これはさまざまなところで語られていますが、子牛は体重に対して体表面積が広く、寒さの影響を受けやすいのが一つ、それからルーメンが未発達であるということで、本来発酵タンクとして高温になるルーメンが未発達だと、そのぶん体温を保つことが難しくなります。ですから、子牛に対しては寒さ対策が必要です。

㈲コバヤシさんでは哺育牛舎を更新するとともに哺乳プログラムを見直し、環境面・栄養面ともに充実した管理を行ないます。そのポイントはどこにあるのでしょうか?

環境が良くないと体調に表れる?

2021年に牛舎を更新した㈲コバヤシさんでは以前、子牛は屋外カーフハッチで飼養していました。極寒の地での管理はとても苦労したそう。下痢や発熱に対処するため薬や添加剤に頼ることが多かったと小林さんは振り返ります。

新しい哺育牛舎はダクト式の陽圧換気システムを採用しました。牛舎の中に2本ダクトが通っており、新鮮な空気が絶えず牛舎内に送り込まれます。

子牛の鼻先に新鮮な空気が送り込まれるように、何度も視察を重ね、専門家に意見を聞き、空気の流れなどを計算して実現したのです。

また、冬場でも良好な換気を実現しながら牛舎内の温度を保つために、屋根裏に断熱フォームを施工したことで真冬でも牛舎内がマイナスになることなく管理できるようになりました。

ハッチでの哺乳後は同じ牛舎内の哺乳ロボット牛群に移動し、さらに離乳後は隣のペンに移動します。同じ牛舎内で哺育~育成期を過ごすため、移動によるストレスに配慮された作りになっていました。

生まれたばかりの子牛はカーフウォーマーで乾かしてからハッチへ移します。こうすると、初乳を飲まない子牛はほぼいなくなるようです。使用後のカーフウォーマーは毎回お湯で綺麗に洗います。

こだわりの哺乳ロボットエリア

ハッチで10日間個別管理をした後は、ロボット哺乳群に移動します。

集団哺乳ペンは二つ。それぞれ採食エリアと休息エリアに分かれていて、休息エリアは1頭当たり3㎡を確保しています。

そして小林さんが最もこだわったのは哺乳ロボット室。通常のロボット室より広く設計し、ハッチ子牛用の調乳設備も整えられていました。粉ミルクの保管、作業効率、メンテナンスなどさまざまな作業がしやすい設計となっています。

哺乳プログラムは専門家に頼る

㈲コバヤシさんの哺乳プログラムを管理する氏本壮さん(全酪連)にもお話をうかがったところ「小林さんの成功の秘訣は、牛舎設計も栄養管理も、専門家の意見をとことんよく聞き、納得したら忠実に実行すること」だと言います。

やはり良い施設や良い環境が揃っていても、最終的にその道に長けた専門家に意見をもらい、しっかり納得して実践することは大事なのですね。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


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