酪農技術情報

酪農場の雇用対策について取材しました

JOURNAL 2024.09.24

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

 酪農生産現場では、1戸当たりの生産量が増えるに伴い、牛飼い技術のほかに「人を安定して雇用する」ということが求められます。しかし現実はどの業界も人手不足と言われ、求人に悩む牧場も多いのではないでしょうか。Dairy Japan 2024年8月号では、特集「どうする雇用対策」で安定した雇用を実現する牧場の取材をしました。うかがったのは北海道雄武町の「株式会社Reve北幌内」さん。

採用費は固定費

 2017年に3農場が共同で立ち上げた株式会社Reve北幌内。経産牛485頭、未経産牛489頭の牧場です(取材時)。フリ―ストール/搾乳ロボット8台の牛舎で乳牛を管理し、採草地・デントコーンを合わせ約400haの飼料畑を抱える同牧場では、従業員が10名在籍しています。日本人の正社員がほとんどです。

 稼働当初の課題は、人材確保と労働環境整備でした。家族経営から雇用型経営への転換で、従業員の労働時間や環境を整備しなければならなくなったのです。

 採用活動に関しては、初めは同牧場のホームページや地元の求人など身近なところから募集をかけていましたがなかなか集まらず、限界を感じていました。農場の運営を担う是川千歳専務は「採用にはしっかりと投資をしなければならない」と実感し、現在は酪農畜産業界の就職を得意とする人材紹介企業と契約し採用しています。おかげで必要なタイミングで必要な人材を紹介してもらえ、従業員が余裕を持って働ける環境作りを実現することができました。

農場を紹介するホームページも重要

 株式会社Reve北幌内は積極的な機械化・自動化を図り「経験を問わず幅広い人材が即戦力となれる牧場」を意識して経営し、同牧場のホームページでも紹介しています。そのおかげか、取材当時同牧場の従業員のうち、正社員は8名。さらに未経験で入社した女性が半数以上を占めています。まさに牧場の方針が求職者に届いている形でした。採用段階や採用後の段階で、ほとんどの社員が「ホームページを見た」と言うそう。ホームページは農場の見せ方や信用を高めるのに一役買っているということですね。

日本人が求める働き方

 労働環境を整えるにあたって是川さんが考えたのは「外国人実習生と日本人従業員とでは、希望する働き方が異なっている」ことでした。日本人従業員の傾向は、仕事以外の時間をしっかり確保しできることでした。そこで現在は月5日の休日を確保し、夜番を除き17時半までの勤務で残業は一切なしという労働環境を実現しています。

マニュアルと数値化など、仕組み作りが重要

 同牧場では農場作業全体のマニュアルを作成しているほか、とくに重要なステージと考えている子牛の哺育管理を全員が高レベルで実施できるように細かな哺育マニュアルも設定しています。哺育管理を平準化したことにより、子牛の死廃率は年々低下し、現在は年間450頭以上の子牛が生まれるうち死廃率は2%以下だと言います。

 また同牧場の特徴として、営農スタッフのほかに事務職として1名雇用し、農場で得られたデータを集め数値化し、全員に共有しています。これにより、個人および農場全体の目標や現在値などをすぐに共有でき、従業員のモチベーションアップや作業性向上に大きく貢献していると言います。

 今後は従業員の評価制度やステップアップの環境を充実させ、従業員達から同牧場の次世代を担うリーダーが出てくるような職場作りを目指しています。

この取材内容をもっと詳しく知りたい方は、『Dairy Japan 2024年8月号』をご覧ください!

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


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