酪農役立ちコラム

水本牧場ブログ54:トレハロース給与後に見られた変化

JOURNAL 2026.10.26

今年の7月から、暑熱対策の一つとして、トレハロースの給与を始めました。

その効果を確認するために、2025年と2026年の7~10月を比較しながら、乳量、乳脂肪、デノボFA、プレフォームFA、MUNなどの変化を見てみました。

▼前回の記事はこちら
水本牧場ブログ53:トレハロースとは?

1. 平均バルク乳量は前年より約159kg増加

まず、平均バルク乳量です。

2025年は、
7月2,655 kg、
8月2,470 kg、
9月2,435 kg、
10月2,527 kgでした。

2026年は、
7月2,637 kg、
8月2,713 kg、
9月2,703 kg、
10月2,672 kgです。

7月は前年より18 kg少ないものの、8月は243 kg、9月は268 kg、10月は145 kg多くなっています。

4か月平均で見ると、2025年が2,521.8 kg、2026年が2,681.3 kgで、約159 kg増加しています。

乳量の推移(2025年・2026年)

暑熱の影響を受けやすい7~10月という期間で、前年よりも乳量が高く推移していることは、今回の比較でまず注目したい変化です。

2. 油脂を減らしても乳脂肪は高く推移

次に乳脂肪です。

2025年は、
7月3.92%、
8月3.90%、
9月4.02%、
10月4.06%でした。

2026年は、
7月4.11%、
8月4.10%、
9月4.09%、
10月4.12%です。

7月は前年より0.19ポイント、8月は0.20ポイント、9月は0.07ポイント、10月は0.06ポイント高くなっています。

4か月平均では、2025年3.98%に対して、2026年は4.11%。約0.13ポイント高くなっています。

乳脂肪の推移(2025年・2026年)

ここで私が特に注目しているのが、油脂系飼料を2026年5月から1.8 kgから1.5 kgへ減らしているにもかかわらず、乳脂肪が高くなっていることです。

乳脂肪は、単純に飼料として脂肪をどれだけ与えたかだけで決まるものではありません。

ルーメン内では、微生物によって飼料が発酵され、その過程で生じる揮発性脂肪酸などが、乳脂肪の合成にも関係しています。

そのため、乳脂肪の変化を見るときには、給与飼料だけではなく、ルーメン内で微生物がどのような環境で働いているのかという視点も重要だと考えています。

3. デノボFAは高く、プレフォームFAは低く

そこで、今回もう一つ注目しているのがデノボFAです。

2025年のデノボFAは、
7月25.9%、
8月24.9%、
9月26.9%、
10月27.3%でした。

2026年は、
7月27.4%、
8月26.4%、
9月27.1%、
10月27.6%です。

特に7月、8月では、前年よりそれぞれ1.5ポイント高くなっています。

4か月平均でも、2025年26.25%に対して、2026年27.13%と、約0.88ポイント高くなっています。

デノボFAの推移(2025年・2026年)

さらに、デノボMilkも見てみます。

2025年は、
7月0.95%、
8月0.90%、
9月1.01%、
10月1.03%。

2026年は、
7月1.05%、
8月1.02%、
9月1.05%、
10月1.01%でした。

2026年の7~10月平均は1.03%で、前年の0.97%より高くなっています。

一方、プレフォームFAは、2025年平均39.78%に対して、2026年は37.58%でした。

つまり、乳脂肪が高くなっている一方で、プレフォームFAは低くなっています。

この変化を見ると、単純に「給与した油脂が乳脂肪になった」と考えるだけでは説明しきれない部分があります。

むしろ、ルーメン内での発酵や微生物の活動、そこから供給される脂肪酸など、乳脂肪が合成されるまでの過程にも目を向ける必要があるのではないかと考えています。

4. 乳蛋白は横ばい、MUNは低下

乳蛋白は、2025年、2026年ともに年間を通して3.25~3.30%で推移しています。

MUNについても見てみます。

2025年は、
7月10.6、
8月11.1、
9月10.2、
10月12.5 mg/dL。

2026年は、
7月9.3、
8月10.2、
9月10.6、
10月11.0 mg/dLです。

4か月平均では、2025年11.1 mg/dLから、2026年10.28 mg/dLへ低下しています。

MUNの推移(2025年・2026年)

MUNは、タンパク質給与量だけではなく、エネルギーとのバランスなど、さまざまな要因によって変化します。

そのため、今回の数値だけから「トレハロースが原因」と断定することはできません。

5. 微生物環境を整える手段として観察を続ける

ただ、今回の比較では、油脂系飼料を減らしたにもかかわらず、乳量を維持・増加させながら、乳脂肪とデノボFAが前年より高い状態で推移しています。

この変化は、私にとって非常に興味深いものです。

トレハロースを使ったから乳脂肪が上がった、と単純に考えるのではなく、トレハロースの給与によって、暑熱環境下でも牛の採食や消化、そしてルーメン微生物が働く環境に何らかの変化が生じた可能性について、考えてみたいと思っています。

トレハロースを「暑熱対策資材」としてだけ見るのではなく、牛の体内に存在する微生物との関係から考えてみる。

微生物が良く働く環境をつくる。

その結果として、飼料の利用やルーメン発酵が安定し、牛の生産性にもつながっていく。

私は、トレハロースには、こうした視点から見た可能性もあるのではないかと考えています。

暑熱対策として始めたトレハロースですが、今回の乳成分の変化を見ながら、これからは「微生物環境を整えるための一つの手段」という視点も持って、その可能性を観察していきたいと思います。

これからも、乳量、乳脂肪、乳蛋白、デノボFA、プレフォームFA、MUNなどの数値を継続して観察し、トレハロース給与後に牛群でどのような変化が起きているのかを、数字から確認していきたいと思います。

▼参考リンク
多機能糖質「トレハロース」|研究開発ストーリー|研究開発|ナガセヴィータ株式会社
トレハ®A飼料 | NAGASEグループ

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PROFILE/ 筆者プロフィール

水本 康洋

水本 康洋

1983年、別海町の酪農家生まれ。
北海道立農業大学校卒で、帯広市の酪農ヘルパーを経て、実家に就農。
その後、実家を離れ、浜中町にて研修後、2016年4月に新規就農し、現在に至る。

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