皆様お仕事お疲れさまです。あかばね動物クリニックの宮島です。
前回から少し間隔が空いてしまいました。連載ってやはり難しいものです。しばらく連載をお休みしている間に、生成AIに仕事を助けてもらう機会が凄い勢いで増えました。もはや自分にとって欠かせない相棒のような存在です。今回の図も「Gemini」に聞いた後に「NotebookLM」という生成AIに作ってもらいました。本当にありがたいなと思う反面、何か大切なものを少しずつ失っているような気もします。
さて、前回までは初乳を上手に給与するカギとして「細菌をいかに少ない状態で給与するかが大切です」というお話をしたと思います。衛生面にやや自信がない農場では、初乳をパスチャライズすることによって、細菌数を大きく減らした初乳を子牛に給与することができます。
しかし、60℃60分のパスチャライズでは、菌の数をかなり減らすことはできますが、完璧に菌をゼロにすることはできません。ですので、パスチャライズ前の初乳にたくさんの菌が存在すると、その効果は大きく損なわれてしまいます。とにかく初乳の中の菌を多くしないことが重要です(図1~4)。

図1 なぜ菌が残るのか? 殺菌の基本原則「対数減少」

図2 理想的なシナリオ

図3 問題のシナリオ

図4 パスチャライザーを安全に使う
パスチャライザーという機械がまだ農場に広く浸透する前の時代のお話になりますが、子牛の腸炎が大発生した農場がありました。対処はいつも補液です。子牛はなかなか大きくなりません。治療に明け暮れるなか、腸炎の発生を減らす目的で一つお願いをしてみました。それは「初乳をバケットで搾ったら、すぐに子牛に飲ませてもらえますか」というものです。それ以前は、産んだ牛の初乳はバケットで搾られてからバケツに移し替えられ、常温で(そのへんに)保管された後、子牛に給与する前に加温して与えていました。
昔は良く見られた、そのへんのバケツでの初乳の保管です。非常に良くない光景ですが、そこにはハエが混入していることもありました(写真はありますが、お見せできません)。
そんな状態の初乳では、菌がたくさん増えていたに違いありません。それをさらに加温して与えていたのなら……。
そんな農場で、先ほどのお願いをしてみたところ、びっくりするくらい腸炎の発生が減りました。腸炎になっても治療すればすぐに治癒するようになりました。抗生剤や補液などに主眼を置きがちだった自分が「やはり初乳って大事なのだ」と、考え方が大きく転換した衝撃的な出来事でした。
パスチャライズする前の初乳もきっと同じことです。なるべく早くパスチャライズしましょう。腸炎の発生にお困りの方はぜひ、さまざまな薬や添加剤に飛びつく前にその初乳は本当に清潔なのかを今一度よく検証してみてください。ここは大切なところなので次回も続きます。
PROFILE/ 筆者プロフィール
宮島 吉範Yoshinori Miyajima
千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。




