
「スキマバイト」で変わる酪農の現場

Dairy Japan7月号より
働き手が集まらない…どうする?
TMRセンターは、地域の酪農家に毎日新鮮な飼料を届ける要。365日稼働を止められない現場では、常に人手が必要です。しかし、近年の働き方改革や他業種の賃金上昇により、求人を出しても応募がない、せっかく採用してもすぐ辞めてしまう――。酪農業界でもそんな人材確保の悩みが深刻化しています。中標津町でのTMRセンターの先駆けとして始まり、20年以上センターを運営してきた「(有)中標津ファームサービス」も、かつては多くの応募があった求人に募集が掛からず悩んでいました。
そんなときに出会い、新たな一手として選んだのが「スキマバイト」でした。
スキマバイトって、酪農でも使えるの?
「スキマバイト」とは、その名のとおり、スキマ時間ができたときに、すぐに応募して働けるアルバイト。同センターは、「Timee(タイミー)」というスキマバイト・マッチングサービスを使い、試験的に人材を募集してみました。すると意外にも月平均20名ほどの応募が!
「都心ならわかるけれど、中標津に来る人なんているのかと思っていた」と長渕社長も驚いたそうです。
スキマバイトでは面接なし。応募者の過去の評価を見て選び、短時間の勤務後に即時で報酬が支払われる仕組みです。企業側も評価されることで、互いの実績や信頼度を可視化できるところが特徴です。

未経験でも「牛のご飯づくり」に貢献
「酪農の現場は専門的で難しいのでは?」と思うかもしれません。中標津ファームサービスでは、作業を細かく分けることで、未経験者でも活躍できる体制を整えました。
スキマバイトの主な業務は、TMRに混ぜる単味飼料や添加剤の計量・投入作業。マニュアルを完備し、作業自体は極めてシンプルにしています。
加えて、責任者がレクチャーする際は、「これは“牛の混ぜご飯”です」とわかりやすく説明する工夫も。
また、複数人での作業になるため、視覚的に理解しやすい表示やダブルチェック体制など、安全・正確な運営にも余念がありません。

社内に新しい刺激が
3カ月で40名以上のスキマバイト・ワーカーが訪れたという同社。新しい人が入ることで、従業員にとっても良い刺激となり、社内に新しい視点やコミュニケーションが生まれました。
「将来的には、何度か来てくれた優秀な人を正社員として採用することも考えている」と長渕社長。スキマバイトは、ただの人手不足解消策にとどまらず、質の高い人材の発掘・育成の入り口にもなっています。

「牛の健康のために」働く意味を共有する
長渕社長はTMRセンターで働くうえで重要なことをお話しくださいました。それは、どんなに作業が単純でも、「何のためにやっているのか」を理解してほしい――ということ。
牛が健康に乳を出せるよう、信頼される飼料を届ける。それが地域の酪農を支える自分達の役割であることを、社員やワーカーと共有し続けています。
PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。