
北海道でも暑日が続いています。北海道でも暑熱対策の注目は高まっています。暑熱ストレスの度合いを測る指標に「THI」があります。ご存知の方も多いと思いますので、改めてTHIの解説と、うちの牧場での取り組みをご紹介します!
搾乳牛の生産性、採食量、発酵熱、放射熱とTHIの関係
THI(Temperature Humidity Index)とは、気温と湿度の組み合わせで牛が感じる暑熱ストレスの度合いを示す指標であり、酪農現場で暑熱対策をするうえでの重要な判断基準となります。
THIの上昇と熱ストレスの増大
THIが上昇すると、牛は暑熱ストレスを感じ始めます。これは、周囲の環境温度と湿度が高まることで、牛の体温調節機能が限界に近づくためです。夏になるとTHIが急速に上昇し、牛にとっては非常に過酷な環境となります。
THIが上昇し熱ストレスを受けると、牛は体温の上昇を防ぐために、さまざまな生理的反応を示します。その一つが、採食量(DMI)の減少です。採食量を減らすことで、ルーメン内での飼料の発酵を抑制し、それに伴って発生する発酵熱(代謝熱)の産生量を抑えようとします。これは、体内の熱産生を減らすための、牛の生体防御反応です。
乳牛は高泌乳であるほど多くの飼料を摂取し、それに伴い多くの発酵熱を産生します。そのため、高泌乳牛ほどTHIの上昇による熱ストレスの影響を受けやすく、採食量の減少も顕著になりがちです。
採食量の減少と生産性の低下
採食量が減少すると、乳生産に必要なエネルギーやタンパク質などの栄養素の供給が不足します。これにより、乳量や乳成分(乳脂肪率、乳タンパク率)の低下を招き、最終的に生産性が大きく低下します。
乳量だけでなく、繁殖成績の悪化(受胎率の低下、発情微弱など)や免疫力の低下による疾病リスクの増加など、多岐にわたる悪影響が生じます。
熱ストレスと放熱(放射熱を含む)
周囲の温度が牛の体温に近づく、あるいは上回ると、牛は体表面からの熱放散が困難になります。主な放熱メカニズムである放射(体表面から周囲への熱移動)、対流、蒸発(呼吸器からの水蒸気や発汗)のうち、蒸発による放熱の割合が増加します。しかし、湿度が高い環境では、蒸発による放熱も効率的に行なえなくなります。
暑熱対策をしましょう
THIを指標として牛舎内の環境をモニタリングし、THIが上昇する前に積極的な対策を講じることが、搾乳牛の生産性を維持するために極めて重要です。具体的な対策として、
- 換気の徹底(扇風機、送風機、換気扇などの設置)
- 冷却と遮光(ミスト、ソーカー、エアコン、遮光ネットなどの設置)
- 適切な飲水(水槽の清掃、増設など)
- 飼料管理の工夫(給与回数、給与時間の変更など)
が、あります。
まずはTHIを見える化し(温度計、湿度計、ヒートストレスメーターなど)、牛が感じる暑熱ストレスの度合いを客観的に把握することで、より効果的な暑熱対策を実施し、乳牛の健康と高い生産性を両立させることができるように、常にいろいろな側面から考える必要があると思います。


私が営農している地域は、就農時は夏も過ごしやすい地域で、暑熱対策をそこまで考えることがない、酪農に適した環境でした。しかし、近年の気温上昇で、状況が変わりました。
暑熱対策にはお金がかかりますが、生産性の維持、向上ができれば、そのお金も「経費」ではなく、「投資」に変わると思います。そのときだけでなく、未来への「投資」になるのであれば、対策を実行することが重要だと考えます。
いろいろと暑熱対策を考えるなかで、うちでは現在、「送風」「換気」に力を入れています。

模索するなかで、「ミスト」「エアコン」にも出会ったので、次回は、それらから考えるTHI対策を紹介したいと思います。