イベント/HotTopics

道東地域にも新たな情報普及をー中標津DairyForum2025

JOURNAL 2025.05.02

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

 株式会社SKYWARDは3月26日、根室管内中標津町で「中標津Dairy Forum 2025」を開催しました。北海道内では札幌圏や十勝圏は酪農に関するセミナーが盛んですが、道東圏では少なかったことを受け、株式会社SKYWARD代表の近藤孝治獣医師は、道東地域の生産者はじめ業界を対象として、技術や経営に関する情報共有を目的に当セミナーを開催しました。講演内容は以下のとおりです。

・「乳房注入型シール剤による乾乳期乳房炎予防」長谷川太一氏(Zoetis Japan株式会社)
・「とうほろデイリーセンターの土壌・サイレージ作りへの挑戦」株式会社とうほろデイリーセンター・TMR部
・「スポットワークがもたらす新しい農業経営の形について」千葉連理氏(株式会社タイミー)
・「飼料設計を見直す(搾乳ロボット編)」近藤孝治氏(株式会社SKYWARD)
・「アメリカウィスコンシンでの酪農研究、酪農家訪問から得たもの」福森理加氏(酪農学園大学)
・「農業における関係人口を生み出す効果と必要性」小葉松真理氏(フリーランス農家)
・「泌乳期における子宮内膜厚の評価を利用した受胎率及び妊娠率向上へのチャレンジ」友貞直氏(株式会社Clover Genetics)

 そのほか、企業ブースの出展や、6社の協賛企業によるランチョンセミナーも開催されました。

●地域密着、生産者目線のセミナー

 株式会社とうほろデイリーセンターは、道東地域でサイレージを生産する際に参考となる情報を報告しました。刈り取りのポイントとしては、高水分サイレージはVBN/T-N(アンモニアなど)の含有率が高いことから、乾くまで待つことが重要です。ただし、刈り取り作業が停滞するとTDNが下がる可能性もあることから、バランスを見極める必要があります。サイレージのTDN含量が低い場合は添加剤などで対策できますが、VBN/T-Nが高い場合は乳牛の体調を崩す恐れがあるため、リスクは大きいです。

●スキマバイトが酪農に

 千葉氏は、人手不足が常態化している酪農業界において、株式会社タイミーが提供するサービスを紹介しました。それは、求人サイトでも派遣でもなく、「働きたい時間」と「働いてほしい時間」をマッチングさせるというものです。同社サイトに登録しているワーカーに対して、例えば「除雪」や「掃除」などの作業レベルで仕事を依頼し、その時間に働けるワーカーが応募し、雇用を成立させます。首都圏での利用が一般的でしたが、季節や時間帯によって仕事が大きく変わる酪農や農業との相性が良く、すでに道内でも活用している酪農場やTMRセンターが増えているということです。

●ETでの受胎率向上を目指して

 友貞氏は、顧客農場で授精・受精卵移植を経験するなかで、「子宮内膜の厚み」が関係していると予想し、検証を行いました。結果、発情時に子宮内膜が厚く、移植時に薄く、その差が大きい牛は受胎性が高いことを報告しました。近年、授精戦略が多様化するなかで、高コストの移植を行う際に少しでも受胎率を高めるために、母牛を選定する判断基準となります。また、この判断方法で低受胎と見なされた牛の対処方法についても解説がなされました。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


RELATED/ 関連記事

記事についてのお問い合わせ

error: クリックできません!