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50の手習い(ミルカーチェック編1)

JOURNAL 2025.02.10

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

 ケトーシスや乳熱、第四胃変位などを発症する乳牛は、乾乳管理を見直したことで減りました。また、子牛の肺炎も、適切な飼養管理やワクチネーションによって、かなり減りました。しかし、乳房炎や体細胞コントロールに関しては、今も難しさを感じます。

 乳房炎の原因は非常に多いです。細菌感染、牛床環境、搾乳手技、機械メンテナンス、エサの変更など。個人的にはエサは乳房炎の発生に大きく関係していると考えますが、それに関しては別の機会に。

 最近は良いワクチンが販売され、大腸菌性乳房炎による廃用もかなり減りました。しかし、症状は派手でなくても治療に反応しにくい、地味に体細胞数を上げ続ける、そんな乳房炎が逆に目立つようになってきたように感じます。そのような「しつこい乳房炎」は、搾乳期間中に抗生剤を注入するという従来の方法での根治はなかなか難しいのではと考えています。

 昨年、自分は参加していないのですが、第9回HQMデイリーアカデミーにおいてAndrew Johnson先生が講演された「米国乳房炎コントロールの最前線」に大きな感銘を受けました。

 乳房炎対策は、細菌の存在、抗生剤による治療を意識しながらも、農場における搾乳衛生を評価・改善する力を身につけなければと痛感し、その第一歩として、ミルカーの点検業務ができるよう訓練を始めました。

 1月中旬に、業者さんによる定期的なメンテナンスを受けていない農場において、パルセーターのチェックから入りました。

 搾乳は、乳頭に搾乳システムで作り出した真空を当てることによって、乳房内のミルクを搾ります。しかし、真空を当て続けると乳頭がおかしくなってしまいます。乳頭の先っぽがガサガサします(われわれは「花が咲く」と表現します)。ガサガサの乳頭には汚れが溜まりやすく、拭き取りも上手にできなくなるので、乳房炎の原因にもなりかねません。ですので、真空を遮断してマッサージする時間があります。「搾乳→マッサージ→搾乳」の流れを調節しているのがパルセーターです。非常に大事な装置です。

 今回の点検では図1のような波形が出現しました。パルセーターに詳しい後輩に聞いたところ、マッサージ期がほとんどなく、放置すると乳頭が痛んでしまうとのこと。早速、業者のほうに連絡してもらい、必要な改善をお願いすることになりました。(続く)

写真1 パルセーターチェックをしているところ

図1 パルセーターの波形。上の良い例とは明らかに違う下の波形

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PROFILE/ 筆者プロフィール

宮島 吉範

宮島 吉範Yoshinori Miyajima

千葉県の一般家庭に生まれる。麻布大学 栄養学研究室を卒業後(有)あかばね動物クリニックに入社し獣医師として25年。現在は、乳牛・肥育牛(主に交雑種)・繁殖和牛を担当する。乳牛においては診療・繁殖検診・搾乳立会・人工授精・受精卵移植・コンサルティングなどを行なう。趣味は妻との居酒屋や蕎麦屋巡り。

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