前回は、酪農教育ファーム活動で子ども達の発達段階によってテーマ分けしている「3つのしょく」のうち、「触(しょく)」と「食(しょく)」をご説明しました。今回は、3つ目の「しょく」である、職業の「職(しょく)」についてお話しします。
これは小学校高学年から中学生を応対する際にテーマにしております。実際に牛に触れたり、エサをあげたりすることに加え、酪農家の問いかけによって、子ども達の内側の引き出しを自ら開けられるよう導き、学習成果を引き上げます。酪農教育ファームファシリテーターとしての腕の見せ所です。
私は「経済」「経営」で捉えられるように問いかけています。「牛が1日に稼ぐお金はいくらだろう? 牛乳1リットルの単価は約120円、1頭が1日30リットル牛乳を作ってくれると、3600円稼いでくれるね。30頭いると、牧場全体で約900リットルの牛乳が出荷できる。すると、1日の売上はいくらになるかな? では、1年間でいくらになるかな?」
このようにクイズ形式で問いかけると、漠然としていた酪農のイメージの解像度が上がっていきます。
さらに、「では、牛は1日にいくらのエサを食べるだろう? 石田牧場では、原価率は50%です。すると、1800円がエサ代です。では牧場全体で1日のエサ代は? 1年では?」。あまりの高額にみんなギョッとします。そして、残りのお金で電気代や機械の修理代、治療代、薬代が引かれ、最後の残りで石田さんと石田さんの家族は生活するというお話をします。
さらにもうひと押し。「そう考えると、お仕事というのは大変だよね。では、どうやったらより多くのお金が残るか、考えてみてくれる?」
するとたくさん手があがります。
・電気を節約する
・機械が壊れないように丁寧に使う
・病気をしないように気をつける
・エサを自分で作る
・たくさん牛乳が出るように栄養に気をつける
・アイスにして、もっと高く売れるようにする
このように素晴らしい回答がどんどん出てきます。子ども達は酪農を無意識的に「経営」として捉え、当事者意識が育まれているのです。牛が病気をしないように栄養と健康に気をつけ、丁寧な作業を心がける。丁寧な毎日の仕事をベースに、新しいことにも挑戦してみる。
最後のまとめで、酪農に限らず、すべての仕事における本質に導いてあげられるよう努めています。
ここからさらに、キャリア教育へと導いていけるのですが、それはまた次回。
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PROFILE/ 筆者プロフィール
石田 陽一Yoichi Ishida
1984年神奈川県生まれ。2007年酪農学園大学卒業後、ニュージーランドの大規模酪農場に1年間勤務の後、家業に就農。
2011年ジェラート屋めぐりを創業、法人化。年間来場者数約6万5千人の牧場を運営。
2014年より現職。石田牧場グループCEO