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冬の搾乳ロボット牛舎「あるある」—冬季運営のヒントー

PICK UP 2025.12.03

 こんにちは、デラバルのアドバイザリー担当です。今回のテーマは「搾乳ロボットの冬季管理」です。

 冬は暑熱ストレスが少なく、乳量をしっかり確保できる大切な時期です。一方で、搾乳ロボット牛舎ならではの、冬特有の課題も発生しやすくなります。ここでは、実際の現場でよく見られる「冬の搾乳ロボット牛舎あるある」と、その対策をわかりやすく六つのポイントでご紹介します。

1. 搾乳ロボットの凍結

 搾乳ロボットは牛舎の端(妻側または平側)に設置されることが多く、冷気の影響を受けやすい構造です。寒冷地では凍結による搾乳ロボットの停止が発生しやすく、乳量減少の大きな要因となります。また、全国的な寒波が来た際は地域に限らず注意が必要です。

主な対策

  • 断熱・気密性の高いロボット室づくりを計画段階から検討
  • 電熱ヒーターやジェットヒーターによる加温
  • 冷気に接しやすい場所に配置されている配管の保温材・電熱線による保護
  • 牛舎側からの冷気遮断(牛の出入りに影響のない範囲でエアカーテンやビニールカーテンなど)
  • 深夜帯のアイドル時間に自動洗浄が行なわれるよう設定を調整する
  • 夜間も一定数の搾乳が行なわれるよう管理し、搾乳回数を確保

【牛舎設計・計画時の夏季の注意点】

 断熱性や気密性を高めることで冬の凍結対策にはなりますが、夏季には搾乳ロボット室が「強サウナ室」のように高温になってしまうリスクもあります。設計時には、冬と夏の両方の環境を考慮した対策が重要です。

2. 夜間の搾乳回数の確保

 夜間でも頻繁に搾乳が行なわれている牧場では、凍結トラブルが少ない傾向にあります。

冬季に夜間の搾乳回数を安定させるためには、以下の三つの観点が重要です。

a. 搾乳回数の管理

  • 冬季の搾乳頭数が少ない場合は、搾乳許可の設定を見直し、1日当たりの搾乳ロボットごとの搾乳回数が減らないよう工夫します。

b. 牛が動く動機づけ

  • 夜間でも牛が自発的行動することを促し、かつ搾乳許可のある牛が一定数いる状態をつくります
  • 深夜でも十分な量のPMR(混合飼料)が飼槽にあり、牛が採食できる状態を維持します。
  • 夕方の搾乳時に過度な牛追いを避けることで、牛が夜間も搾乳可能な牛がいる状態をつくります。

3. 歩行状態と牛床内の観察

 秋季は暑熱ストレスのダメージにより、歩行に問題が出てくる牛が目につきやすく、搾乳回数への影響が出やすくなります。夏場に受けた暑熱ストレスの影響は、秋の早い時期に軽減させます。蹄の処置を徹底し、牛の歩行性を確保しましょう。

 牛床や通路の管理も重要です。牛舎内の歩行に問題がある箇所をよく観察し、問題を取り除くことが大切です。

具体的な観察ポイント・事例:

  • フリーバーンの牛床:冬は乾きにくく、バーンが団子状になりやすい傾向があります。牛が足を取られて歩きにくくなり、「動きたくない」と感じる原因になります。
  • フリーストールの通路:給水トラフ周辺など通路の一部が凍結していることがあり、牛が滑って怖い思いをした経験があると、動きたがらなくなります。

4. 乳頭の肌荒れ・凍傷

 冬は乳頭が荒れやすく、ひどいと凍傷になることも。肌荒れした乳頭では牛が搾乳を嫌がり、搾乳ロボットへ向かいたくなくなります。結果、搾乳回数が低下し、乳量減少につながります。

主な対策

  • 効果の認められているポストディッピング液を乳頭に正しく塗布
  • 搾乳ロボットの状態を確認し、異常がある場合は早めに修理依頼
  • 搾乳ロボットのディッピング塗布の設定を調整し、多く塗布されるようにする
  • すきま風を遮断し、乳頭のしもやけを防ぐ
  • 牛床の敷料を見直し、肌荒れしやすい素材を止める

搾乳前の乳頭洗浄において、肌荒れの原因となる溶液や器具の使用を避ける

5. 照度時間の不足

 搾乳牛は一般的な目安として、1日16時間、明るくしてあげることが理想です。長日管理での飼養では、ホルモンの関係で乳量が増加することが知られていますが、冬は日照時間が短く、従業員が退社するときに牛舎内を消灯してしまうと、明るい時間が16時間未満となる可能性があります。その結果、乳量損失につながる可能性もあります。

主な対策

  • 今の点灯時間と消灯時間から、日照時間が不足していないかを確認する
  • タイマーやセンサーで照明を管理する設備を導入する
  • 必要な照度時間を確保する

6. 温水量の不足

 搾乳ロボットの稼働率を維持するために、CIP(プログラムシステム洗浄)洗浄時に合わせて、手洗いによる搾乳ロボット本体も清掃することが多いのではないでしょうか。しかし、本体の清掃時に温水を多く使用すると、CIP洗浄に必要な温水が不足し、洗浄不良が発生し、結果的に生菌数/細菌数が増え、乳代ペナルティにつながることがあります。CIP洗浄は衛生管理の要となるため、十分な温水を確保することが重要です。

主な対策

  • 計画段階:温水器は十分な容量のあるものを選択します
  • 稼働後:本体の清掃は1日のなかで数回に分けて実施するルーティンに見直し・変更し、CIP洗浄時の温水不足を防ぎます
  • 必要に応じて温水器の増設も検討します

おわりに

 冬の搾乳ロボット牛舎運営では、凍結対策、暑熱ストレスを受けた牛の健康管理、乳頭ケア、照明や温水の管理など、さまざまな細やかな配慮が乳量確保と安定経営のカギとなります。
 また、今回は詳しく触れていませんが、栄養管理や換気不足といった要素も冬季の乳量や牛の健康に大きく影響します。飼料設計や牛舎内の空気環境にも十分注意を払い、総合的な管理を心がけることが重要です。

 現場での「あるある」や日々の観察を活かし、ぜひ自牧場の冬季運営にお役立てください。

 弊社ホームページでは、酪農機器関連を中心に、さまざまなトピックスをご紹介しています。ぜひご覧ください。

PROFILE/ 企業プロフィール

デラバル株式会社

デラバル株式会社

創立から140年を超えた歴史ある酪農関連機器メーカーです。スウェーデンに本社を構え、持続可能な酪農業と食料生産への貢献を目指し、搾乳ロボットVMS™V300をはじめとする環境負荷への影響に配慮した製品開発と提案、アフターサービスを提供しています。

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