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■テーマ:既存繋ぎ牛舎へのVMS導入の可能性

PICK UP 2025.06.04

繋ぎ飼い牛舎」が多い日本の酪農運営

日本の酪農家の軒数は年々右肩下がりである一方、地域によっては大規模化が進んでおり、多頭数を効率的に飼養管理する必要があるのが現状です。しかし、日本の生乳生産は、それらの大規模牧場だけによって支えられているわけではありません。日本における酪農業は、依然として繋ぎ飼い牛舎による運営が60~70%を占めます。
 同時に、どのような規模の運営を行う牧場様も、人材獲得や維持は課題の一つであり、搾乳作業をいかに効率的に行なうか、または搾乳作業自体の代替として搾乳ロボットの導入に興味・関心を持つ方もいらっしゃいます。

 「うちにはフリーバーン/フリーストールがないから、搾乳ロボット導入の選択肢は取れないな」と既存繋ぎ飼い牛舎への搾乳ロボットの導入自体を選択肢から外していらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
 しかし、条件が揃えば可能であることをお伝えするべく、ここでは、とある牧場様を一例として繋ぎ飼い既存牛舎へのVMS™V300導入を考察します。

既存牛舎への搾乳ロボット導入にあたっての大前提
 「可能である」とは言え、大きな前提条件が存在するのも確かです。以下に、その条件を提示します。

・工事期間中に牛の居場所がある
 搾乳ロボットの設置工事には、2~3カ月程度が必要な場合が多いです。現在、酪農運営を行っている繋ぎ飼い牛舎に搾乳ロボットを導入する際は、工事期間中に別搾乳設備や乾乳・育成・哺乳舎などが不可欠です。ただし、これから新規就農をする場合や近隣の牛舎を購入したなど、手元に牛がまだいない状態の場合はそれらの考慮は不要です。

・どの程度増頭したいのか
投資費用の回収のためには、搾乳牛の増頭を念頭に検討します。それによって、既存牛舎にどの程度の増改築を行なうのか計画を立てる必要があります。

・既存設備上、「できること」と「できないこと」を明確しておく
 例えば搾乳ロボットの導入にあたり、変更できない柱の位置や通路幅は、牛の流れや牧場運営上、日常作業にどのような影響を与えそうか、しっかりとイメージできるまで各関連業者と十分相談し情報収集を行ないましょう。

・牛の導線の選択肢の制約

 既存施設では、牛の導線(カウトラフィック)の選択肢が限られる場合もあります。それによって、日常作業が繋ぎ飼いの場合と比較して、予想以上に変化することもあり得ます。

実際に必要な検討事項や作業
 既存の繋ぎ牛舎に導入するにあたり、条件によっては必要な作業がでてくる場合があります。その一例をご紹介します。

・典型的な繋ぎ牛舎に多いバーンクリーナー部分のコンクリートによる埋め立て

・バーンクリーナーの埋め立てに伴う、除糞スクレーパーの導入の検討

・十分な給飼スペースの確保

・エサの供給状況の確認(例:近隣のTMRセンターの有無など)

・牛の導線の確保(この牧場様の場合は、牛床を削減する必要がありました)

繋ぎ牛舎にVMSを導入するメリット/デメリット

 世界情勢が不安定な中、新たな目標を持って大きな投資をして搾乳ロボットを導入したはいいが、思っていたのと違った、ということは誰もが避けたいことです。そんな後悔を残さないためには、メリット/デメリットを予めしっかりと考慮する必要があります。ここでは、既存の繋ぎ飼い牛舎や施設に搾乳ロボットを導入する際のメリットとデメリットをご紹介します。

●メリット

・新築による導入との比較では、設備にかかる投資費用を大幅に削減することが可能です。

・既存牛舎のため、新たな手続きが省力される場合もあります(※各種条件により異なります)。

●デメリット

・既存設備を活用するため制約が生じます。その結果、日常作業で我慢しなければいけない部分や、すでにキャパシティが決まっているため、目標に対しどこを落としどころにするかを決定するのが難しい部分があります。

・十分な検討期間と牛や作業動線の確認、投資対効果や日常作業の変化、そして搾乳作業以外の負担増減など、多面的に考える必要があります。新築牛舎の場合は、すべてをイチから設計するため、ご自身の日常作業を含めた希望や牧場の目標に柔軟に対応できる部分が多いです。
 しかし、既存牛舎ではすでに決められた「箱」の中で出来ることを模索することになります。十分な検討期間とご自身の中での作業や牛の導線のイメージや理解、他牧場様への視察や各種業者との認識にズレがないか都度確認しながら進める必要があります。

とある牧場様の一例

とある牧場様は、既存の繋ぎ飼い牛舎へ搾乳ロボット導入を行ないました。それに伴い行なった作業をご紹介します。

【前提条件】
・既存の施設内に、工事期間中も別搾が可能な設備があった。
・近隣に離農農家の施設があり、乾乳牛などを移動し工事期間中でも手入れできる場所があった。

【改築前】
・繋ぎ飼い牛舎に多い、バーンクリーナーを使用していた
・牛床は、約50頭分があった

【改築後】
・バーンクリーナーをコンクリートで埋め、スクレーパーを導入した
(段差やレベルを合わせて適正にするコンクリート工事が必要です)
・牛の導線確保のために、2床分の牛床を通路にした
・牛の導線は、「フィードファースト」を選択

※デラバルでは、「自由往来(フリーカウトラフィック)」、誘導型である「ミルクファースト」と「フィードファースト」から牛舎構造やお客様のご希望、作業の効率性に合わせた牛の導線の選択が可能です。

最終的には、ご自身の牧場をどうしていきたいのか?が、「カギ」です

 前提条件や制限はあるものの既存繋ぎ飼い牛舎に搾乳ロボットを導入することは、可能な場合もあります。今後、人手不足の解消や次世代へ運営を渡していく際に新しい搾乳システムの導入や入替という選択肢を取る時、搾乳ロボットも一つの選択肢になり得ることを頭に片隅に置いておくのも良いでしょう。

 もちろん、最終的な意思決定は、牧場運営を行なっていくお客様が判断を下していくこととなります。必要な費用やこれまでとは異なる日常作業の十分な検討とイメージを持つことに加え、投資対効果をどのように評価するか、何ヵ年計画にするか、など考慮すべきことは予想よりも多くあるかもしれません。
 また、不安定な社会情勢の中で、大きな投資となる建築に関わる費用が抑えられることなどは一見メリットにも見えますが、それだけではありません。
 多面的に「搾乳ロボットを導入してどんな牧場運営を行っていきたいのか?」という明確な目標があることで、重要な意思決定の際にご自身の中で納得できる答えを出す基準ともなります。
 それらも踏まえて、既存繋ぎ飼い牛舎への搾乳ロボットVMS™V300は、機械が持つあらゆる機能と選択肢が将来の可能性を大きく広げてくれるかもしれません。
是非、今後の酪農運営を検討する際に参考となれば幸いです。

PROFILE/ 企業プロフィール

デラバル株式会社

デラバル株式会社

創立から140年を超えた歴史ある酪農関連機器メーカーです。スウェーデンに本社を構え、持続可能な酪農業と食料生産への貢献を目指し、搾乳ロボットVMS™V300をはじめとする環境負荷への影響に配慮した製品開発と提案、アフターサービスを提供しています。

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