酪農技術情報

日々蹄管理ができる経営サイクルを実現

JOURNAL 2024.07.31

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

 蹄の健康は乳牛の生産性に大きく影響することは周知の事実です。Dairy Japan 5月号の特集「乳牛の蹄管理の実際」では、北海道別海町の株式会社Cow’s family(卯野牧場)における蹄病対策とその効果について取材しました。

蹄病対策の優先度を高く

 卯野牧場は、蹄の健康を維持するための管理を重要視しています。なぜなら牛が満足にエサを食べ、ベッドで休み、搾乳できるのは、蹄の状態が良いからこそです。卯野さんは「蹄病は早期発見・早期対処で格段に良くなる」と語ります。

 そんな蹄に重点を置いた管理の過去には、蹄トラブルが多発し、そのせいで作業が遅れ、従業員の勤務時間の超過や獣医師対応による卯野さんの作業が進まないなど、負の循環に陥ったこともありました。

 そこから卯野さんは改めて蹄管理の重要性を認識したといいます。

自分でやってみよう

卯野さんは、かつてはすべての蹄病の治療を外部に依頼していましたが、自身でも削蹄を学ぶことにしました。これは、獣医師や削蹄師が対応するまでの時間にさらに悪化し得ることや、自身の時間確保に課題を感じたためです。

 株式会社トータルハードマネージメントサービスの阿部紀次獣医師から手技を学び、実践を繰り返すことで技術を習得しました。これにより、早期対応ならば簡単な自家治療で良くなること、逆に放置していたら取り返しのつかない状態になることを実感しました。

削蹄師とのコミュニケーション

卯野牧場は年に3回の定期削蹄を実施しています。削蹄師とのコミュニケーションを重視し、蹄の調子について積極的に情報を共有することで、過削蹄を防ぎ、適切な削蹄を行なうようにしています。削蹄師からも「限られた機会だと思って蹄を切りすぎないように」との助言を受けています。

自分の時間を作り出す努力を

 現在は、従業員から牛の異常や「肢が痛そう」などの報告を受けるとすぐに対応ができるくらい、自身と農場の仕事のコントロールができている卯野さんですが、そのきっかけになったのは、グローバルGAP認証取得に向けて勉強を開始したことでした。経営を見直し「うちの経営に本当に必要なことは何か?」を考え直し、結果として草地管理をTMRセンターに依頼するなど、大幅な経営方針転換を行なってきました。そのおかげで、卯野さんは牛の健康をしっかりと管理することに日々時間を使えるようになったといいます。

無理なくできることを粛々と

卯野さんの経営方針は、乳量を追い求めずに産次数を伸ばし、牛に長く働いてもらうために健康的に飼養すること。「何か特別なことをするのではなく、何も起こらないように、基本に忠実に管理することが最大のポイント」と語ります。また、現状規模でどこまで利益につなげられるかを考え、環境と人員に合った目標を設定し実践しています。

PROFILE/ 筆者プロフィール

前田 真之介

前田 真之介Shinnosuke Maeda

Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。


RELATED/ 関連記事

記事についてのお問い合わせ

error: クリックできません!