飼料価格の高騰を受け、有限会社ミズノの水野穣治さん(北海道広尾郡大樹町)は、飼料費削減のために副産物飼料を導入しました。これまで使用していた蛋白質源が120円/kgを超えるまでに高騰し、株式会社ファームエナジーの中島樹さんの提案で安価な醤油粕に置き換えることを決定。また、ビートパルプの供給減少を受け、DDGS(トウモロコシなどを蒸留しエタノールを作る際に出る粕)を採用し、飼料費の抑制を図りました。
醤油粕とDDGSの特徴
醤油粕とDDGSは有効な蛋白質源と繊維源であり、醤油粕はルーメンバイパス蛋白質(RUP)を豊富に含んでいます。DDGSはビートパルプの代替として使用され、飼料メニューの変更により、エネルギー飼料の追加が必要となりますが、価格を抑えることが可能となりました。
飼料メニューの慎重な変更
飼料メニューの変更は段階的に行なわれました。一気に全量を切り替えるとルーメン細菌叢に影響を与えるため、100g単位で徐々に増やし、完全な切り替えまでに2カ月以上を費やしました。結果として大きなトラブルなくメニューの変更に成功し、1頭当たりの飼料費が1日20円下がりました。
安定した供給と品質確保
水野さんが使用する副産物飼料は中島さんが顧客農場ぶんをまとめて注文するため、品質と供給量が安定しています。とくに醤油粕は、メーカーごとに成分や形状が異なるため、同一メーカーの製品を確保し続けることが重要です。DDGSも信頼できるメーカーのものを選定し、複数農場ぶんをまとめて発注することで、スケールメリットを得られました。
多くの情報を仕入れるのが大切
これまで、1社の飼料会社のみと付き合いを続けてきた水野さんは、中島さんとの関係を通じて、多方面からの意見や情報を得ることができ、農場の改善につながっています。「多くの情報に触れることは、思いもよらない気づきを与えてくれる」と水野さんは言います。
これについては中島さんも「副産物飼料は質・量の確保のほかに、栄養の特性をきちんと知ったうえで使用することや、使用量の上限を把握しなければならない。副産物飼料を乳牛のパフォーマンスに結びつけるのは簡単ではない」と語ります。専門家の意見を取り入れるのが重要だということがわかります。
粗飼料の品質の重要性
副産物飼料などを用いて牛のコンディションを落とさずに飼料費削減に取り組む水野さんですが、「やはり粗飼料の品質が重要」と強調します。とくに昨今は猛暑や暑熱期間の変化などで飼料作物にもさまざまな影響が出ています。今後は気候変動にも対応できる品種の選定が必要であり、中島さんも粗飼料品質の向上が飼料設計を容易にすると述べ、さらなる発展を目指しています。
PROFILE/ 筆者プロフィール
前田 真之介Shinnosuke Maeda
Dairy Japan編集部・北海道駐在。北海道内の魅力的な人・場所・牛・取り組みを求めて取材し、皆さんが前向きになれる情報共有をするべく活動しています。
取材の道中に美味しいアイスと絶景を探すのが好きです。
趣味はものづくりと外遊び。