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初乳の“質”への投資、元は取れる? 子牛の損失は1頭・月1万円超の差|Dairy Biz 03 を読む 第2回

JOURNAL 2026.11.02

Dairy Japan編集部

Dairy Japan編集部Dairy Japan Editorial Department

初乳は、生まれたばかりの子牛が最初に受け取る「免疫」です。多くの農場が初乳の量には気を配っていますが、「質」まで手が回っているでしょうか。

酪農学園大学 獣医学群 ハードヘルス学ユニット・准教授の福森理加先生は、道東の農場調査のデータから、初乳管理の差が子牛の損失額にどれだけ表れるかを示し、良い初乳を確保するための投資が「元を取れるか」を試算しています。

※本記事は、Dairy Japan 2025年9月臨時増刊号『Dairy Biz 03』の特集「これって実際儲かるの? 投資・取り組みに対する費用対効果」Part.2(福森理加「初乳の質にこだわるのは良い投資? 高品質初乳確保が農場の損失を防ぐ」p.20〜29)の一部を再構成したものです。

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こんな方におすすめ

  • 初乳はしっかり飲ませているのに、生後1カ月以内の子牛の下痢・肺炎や死廃が減らない
  • 分娩センサーや初乳まわりの道具を入れるか迷っている
  • 初乳製剤にかかる費用を見直したい

この記事の要点

  1. 道東39農場の調査で、受動免疫不全(FPT)の子牛を10%未満に抑えられていた農場は12件だけ
  2. 生後1カ月以内の死廃率が高い農場と低い農場では、子牛の損失額に1頭・1カ月当たり1万661円の差
  3. 差が出たのは初乳の「量」ではなく、冷凍初乳のストックなど「質」を確保する仕組み

FPTの子牛を10%未満にできていた農場は、39件中12件

子牛が初乳から十分な免疫(IgG)を得られず、病気にかかりやすい状態を「受動免疫不全(FPT)」といいます。誌面では、生後24時間〜7日齢で血清IgG濃度が10mg/mℓ未満、またはTP濃度が5.2g/dℓ未満の場合と説明されています。

米国の報告(2020年)は、農場内のFPT子牛の割合を10%未満にすることを目安としています。ところが、2021〜2022年に道東の39農場を調べた研究では、この目安を達成できていた農場は12件(31%)にとどまりました。

損失額の差は、子牛1頭・1カ月当たり1万661円

同じ調査で、生後1カ月以内の死亡・廃用率が6.75%以上の農場(18件)と、それ未満の農場(21件)を比べています。哺乳量や哺育の形態には違いが見られませんでした。

一方で、死廃率の高い農場では、消化器病や、消化器病と呼吸器病の併発で死ぬ子牛が多く、子牛の死亡による損失額は子牛1頭・1カ月当たり1万661円の差になりました。さらに、死廃率の高い農場は、失った後継牛を購入で補う傾向も示されています。

差が出たのは「量」ではなく「質」の仕組み

では、FPT子牛が多い農場と少ない農場は、初乳の何が違ったのか。意外にも、与えている量には差がありませんでした。どちらも半数以上の農場が、初回に3ℓ以上、2回目までに5ℓ以上を与えていました。

FPT子牛が多い農場
(20%以上)
FPT子牛が少ない農場
(20%未満)
初乳の冷凍ストックをしている25%58%
Dairy Biz 03 p.24 表3(Kayasaki et al., 2024)から編集部が抜粋

違いが見られたのは、冷凍初乳のストックでした。FPT子牛が少ない農場の58%が冷凍初乳を利用していたのに対し、多い農場では25%。福森先生は、初乳の量をたくさん与えることより先に、「いかに農場内でFPT子牛を作らないようにするか」に焦点を当てることが重要だと指摘しています。

2万5000円の手動搾乳器は、初乳製剤6〜7袋で元が取れる

良い初乳を確保するには、分娩後なるべく早く搾ることがポイントです。とはいえ、分娩に気づいてからバケット搾乳器を準備して、搾って、洗って……という手間が壁になります。

そこで誌面で紹介されているのが、手動の搾乳器です。乳頭の清拭も含めて所要時間は約10分。1ボトルで1ℓ弱、3〜4回ボトルが一杯になるまで搾れば、1回の哺乳ぶんほどを賄えます。価格は約2万5000円ですが、福森先生は初乳製剤6〜7袋ぶんで元が取れると見ています。

手動搾乳器
写真2 手動搾乳器(Uddely EZ:㈱野澤組)左:搾乳機は洗って繰り返し利用可。右:手軽に清潔な初乳を搾乳できる。(Dairy Biz 03 p.27)

誌面ではこのほか、分娩の時刻を正確に知るための分娩検知センサーについて、本体・センサー・月額利用料を挙げたうえで、どのくらいの規模なら1年で導入費用を賄えるかまで試算しています。

分娩検知センサー
写真1 分娩検知センサー(モバイル牛温恵 ㈱リモート)温度データロガーによって、分娩約24時間前の体温低下と破水(センサーが外れたこと)による温度低下を検知して、管理者に通知する。(Dairy Biz 03 p.26)

この続きは誌面で

  • 分娩検知センサーは、経産牛何頭以上なら1年で導入費用を賄えるか
  • 分娩後、何時間以内に搾れば高品質な初乳が取れるか(264サンプルの分析)
  • 「初産牛の初乳は使えない」は本当か。Brix値で見る良い初乳の目安
  • 初乳の量を増やす方法と、それを初乳製剤の金額に換算した試算
  • 表1〜4(死廃率別の飼養管理・死因と損失額・FPT子牛の多少別の初乳管理・初乳成分)
この続きは誌面で Dairy Biz 03 続きを読む

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連載「Dairy Biz 03 を読む」(全5回)

  • 第1回 哺乳に1頭2万円多くかけて、元は取れる?
  • 第2回 初乳の“質”への投資、元は取れる?(この記事)
  • 第3回 自給飼料を「お金」に換算すると見えること(近日公開)
  • 第4回 乾乳牛の暑熱対策は何倍になって返ってくる?(近日公開)
  • 第5回 帳簿の数字を経営に使うための第一歩(近日公開)

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本書の内容

特集1 これって実際儲かるの? 投資・取り組みに対する費用対効果
Part.1 発育良好な子牛は未来の稼ぎ頭 哺乳管理に注力するコスパを考える(杉野 利久)
Part.2 初乳の質にこだわるのは良い投資? 高品質初乳確保が農場の損失を防ぐ(福森 理加)
Part.3 自給飼料が違うと収入はこんなに違う 自給飼料の経済性を検証(海田 佳宏)
Part.4 実はとても重要な乾乳牛への暑熱対策 乾乳牛への暑熱対策の経済効果を考えてみました(大場 真人)

特集2 酪農の経営管理は「面倒くさい」!? それはなぜ?
Part.1 経営管理は面倒くさい! を超える 数字から考える酪農経営の第一歩(日向 貴久)
Part.2 酪農経営の把握は今後の必須科目(須藤 純一)
Part.3 経営形態ごとの“儲かる条件”とは?(須藤 純一)

特別企画 実際に酪農生産者に聞いてみた 費用対効果goodなモノ・コト

シリーズ
フォトギャラリー 知久 久利子さん・知久牧場(千葉県野田市)(高田 千鶴)
酪農と地域を盛り上げるユース達 第3回 若手リーダーの挑戦 川上牧場 川上哲也さん
World Dairy Report 酪農乳業の国際情勢を読む 第12回「食料安全保障」と「気象」「健康」がリンク?(寺田 展和)
酪農経営を多角的にサポートするDMS 第3回 全酪連DMSの紹介(置本 宗康)
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海外情報 from USA(チャンドラ 智佳子)

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